第6話 EP1-6 古堂は弱い

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。一応いちおうしの魔狩まかりである。


 オレもついに、狭魔きょうまおそわれた。

 運好うんよく、今回こんかいなずにんだ。たおせるとは、最初さいしょからおもってない。

 でもまたいつか、おそわれる。どちらかがえるまで、何度なんどでも、何度でもである。


 のこれるがしない。

 オレはあわてて、魔狩まかりギルドにたすけをもとめた。

 しかし、自力じりきでどうにかするしかない、と結論けつろんされた。あきらめかけたオレに、顔見知かおみしりがこえをかけてきた。


   ◇


「……あ。古堂ふるどうさん」

 オレは、ちからなくこたえた。


 古堂ふるどう 和也かずや魔狩まかりである。弓矢ゆみやでの遠距離えんきょりせんひいでる『スナイプ』で、小型こがた洋弓ようきゅう背負せおう。

 オレや桃花ももか近所きんじょむ、大学生だいがくせいである。金髪きんぱつ逆立さかだて、くろかわジャンかわパンツの、派手はでちのおとこである。


古堂ふるどうさん! こんちは!」

 桃花ももか挨拶あいさつに、古堂ふるどうがビクッとかたふるわせ身構みがまえた。

たな、バイオレンス絢染あやそめ! 永遠えいえんのライバルと、いつもセットでいやがって!」

 古堂ふるどう桃花ももか苦手にがてだ。きっと、一般人いっぱんじんえた程度ていど力量りきりょうしかないからだろう。

「……それだっ!」


   ◇


 オレは、一縷いちるのぞみにけて、古堂ふるどう受付うけつけカウンターにんだ。

「……これはっ?!」

 黒髪くろかみをきつくまとめた受付嬢うけつけじょうが、個人こじんデータをながらおどろく。

奇跡きせきですね。遠見とおみさんは戦闘せんとうけい特殊とくしゅ能力者のうりょくしゃなのでかりますが。戦闘せんとうけいの『スナイプ』で一般人いっぱんじんみによわかたがいらっしゃるとは、おもいませんでした」


よわいでしょ。ザコでしょ。ビックリでしょ」

 桃花ももかわらいながら強調きょうちょうした。

「おいおいおい、やめてくれよ。おれっちは繊細せんさいなんだぜ。よわい弱い連呼れんこされたらいちゃうぜ」

いまさらでしょ、古堂ふるどうさん」

 桃花ももかわらいながら、バンバンと古堂ふるどう背中せなかたたく。

「やめろ! バイオレンス絢染あやそめ! 本気ほんきいたい!」


たいいちであれば、てる見込みこみもあるでしょう」

 受付嬢うけつけじょうが、小袋こぶくろ密封みっぷうされた『刻印こくいん』をす。は、ゴテゴテしたオモチャの指輪ゆびわである。

「ありがとう、ございます」

「いきなり、まさかの大役たいやくだぜ」

 オレと古堂ふるどうで、緊張きんちょうして、かた口調くちょうった。


   ◇


「ということで、まずは武器ぶき特訓とっくん努力どりょく友情ゆうじょう勝利しょうりよ!」

 魔狩まかりギルドのトレーニングルームで、仁王立におうだちで腕組うでぐみして、桃花ももかこえりあげる。

 うすよごれたしろ衝撃吸収材クッションおおわれた大部屋おおべやで、体育館たいいくかんくらいにひろい。


 オレのには、廉価品れんかひん長剣ロングソードよりも一回ひとまわおおきな、片手大剣クレイモアがある。

 おもい。うでりそう。く、両手りょうてつ。


 腕組うでぐみした桃花ももかが、説明せつめい口調くちょうつづける。

「ちょっと特訓とっくんしてもたいしてつよくはなれないわ。だから、あつかえるギリギリサイズの武器ぶきで、一撃いちげき必殺ひっさつ反復はんぷく練習れんしゅうするのよ。つぎはない、一回いっかいポッキリ、ワンチャンスねらいよ」


 トレーニングルームを、ひとあたまくらいのおおきさの、うすよごれたしろいボールがねまわる。

 古堂ふるどうが、小型こがた洋弓ようきゅうかまえる。つがえ、げんしぼる。ねまわるボールをって、ねらいを右往うおう左往さおうさせる。

「イカしたトレーニング、おれっちからイクぜ! おりゃっ!」

 はなった。くうえがき、はずれた。ゆかのクッションに、ポスッ、とちた。


ちがうんだ、本当ほんとおれっちは、こんなにダサくぇ! まとちいさすぎるぜ、スパルタ絢染あやそめ! 今回こんかい狭魔きょうまは、ひとよりおおきなけものがたなんだろ!?」

 桃花ももか抗議こうぎはなった。

急所きゅうしょてないとだから、そのまとでもおおきいくらいよ」

 なくたたとされた。


「つ、つぎは、遠見とおみ 勇斗ゆうときます」

 緊張きんちょうしすぎて、学校がっこう行事ぎょうじみたいな宣言せんげんをした。

 片手大剣クレイモア両手りょうてつ。おもくて、こしよりすこしたかまえる。

「うっ、うりゃぁぁぁっ!」

 気合きあいをれて、まとのボールに先端せんたんした。

 もちろん、はずれた。けんおもくて、ねらいがさだまらなかった。


「まぁ、最初さいしょはそんなもんでしょ。ほら、つぎ! どんどんくわよ!」

 桃花ももかだけ、ってこえをあげた。

 オレも、たぶん古堂ふるどうも、このさき不安ふあんかんじていた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第6話 EP1-6 古堂ふるどうよわい/END

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