第5話 EP1-5 勇斗の災難

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。一応いちおうしの魔狩まかりである。


「ねぇ、勇斗ゆうと先週せんしゅうはアレだったけど、つぎ日曜にちようこそさ」

 桃花ももかが、ない口調くちょうした。そのには、チケットらしきかみがあった。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。


 中学生ちゅうがくせい放課後ほうかご帰宅きたく途中とちゅうなので、二人ふたりとも制服せいふくている。オレは廉価品れんかひん長剣ロングソード桃花ももかはオーダーメイドの両刃りょうば大剣たいけんこしにさげる。


 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。


   ◇


「……えっ!?」

 オレは、灰色はいいろそらしたくろ草原そうげんにいる。しろかぜいて、黒い草原をザワめかす。

 一人ひとりだ。桃花ももかはいない。

 ついに、おそれていた事態じたいきてしまった。オレが、狭間はざままれたのだ。


「ええっ!?」

 恐怖きょうふにキョドりながら、こし長剣ロングソードく。ふるえるかまえる。

 あせほおつたう。がガチガチと高速こうそくる。視線しせん周囲しゅういめぐる。


 ガサリ、とくろ草原そうげんおおきくれた。おおきなけものみたいなものがした。オレにけて、びかかってきた。

「ヒィィィッッッ???!!!」

 甲高かんだか悲鳴ひめいた。オレってこんなこえせるんだ、とおも余裕よゆうはなかった。りおろされるけものつめに、必死ひっし長剣ロングソードかざした。

 ギィィィンッ、と鋼刃こうじん悲鳴ひめいをあげた。オレははじばされて、かたいアスファルトをころがった。


   ◇


「ヒッ、ヒィッ?!」

勇斗ゆうと! 無事ぶじ? もう大丈夫だいじょうぶよ!」

 半泣はんなきで狼狽うろたえるオレを、桃花ももかさぶる。

 しろくものポツポツとかぶ青空あおぞらした住宅地じゅうたくちの、ブロックべいはさまれたせまみちだ。


 もどった。きて、もどれた。


   ◇


「なるほど。こちらでも、できるかぎりのことはさせていただきます」

 黒髪くろかみをきつくまとめた受付嬢うけつけじょうが、ましがおこたえた。

 オレは当然とうぜんながら、最寄もよりの魔狩まかりギルドにんだ。たすけをもとめた。まだ中学生ちゅうがくせいで、にたくない。


 狭間はざまでの滞在たいざい可能かのう時間じかんは、みじかくて数秒すうびょうながくても数分すうふんである。


 狭間はざま狭魔きょうまも、なぞおおい。かってることなんて、ほとんどない。


 狭魔きょうまつよ人間にんげんえらんで狭間はざまむ、とかんがえられている。

 制限せいげん時間じかんない決着けっちゃくかなければ、この世界せかいもどる。けれど、またいつか狭間はざままれる。何度なんどでも何度なんどでも、決着けっちゃくくまで、である。


 わらせるには、その狭魔きょうまたおすか、自分じぶんぬしかない。


 蒼褪あおざめるオレを桃花ももかしのけ、受付うけつけカウンターにまえのめる。

「ねぇ、ギルド職員しょくいんさん。『刻印こくいん』でアタシが手助てだすけって、できないの?」

力量りきりょうちがいすぎます。『刻印こくいん』でも、ちかしい力量でなければ狭間はざまへの同行どうこうはできません」

 受付嬢うけつけじょうましがおこたえた。


 絶望的ぜつぼうてきだ。戦闘力せんとうりょく底辺ていへんのオレにちかしい力量りきりょうなんて、なかなかいない。いたとして、戦闘力せんとうりょく底辺ていへん数人すうにんあつまって、どう狭魔きょうまつというのか。


気休きやすめですが、狭魔きょうまけの御札おふだワンパック提供ていきょうさせていただきます。この申請書しんせいしょ記入きにゅうして、消耗品しょうもうひん窓口まどぐちにおちください」

 受付嬢うけつけじょうが、さすがに同情どうじょうするかおで、申請書しんせいしょした。


   ◇


 オレは、記入きにゅうした申請書しんせいしょに、項垂うなだれ、かたとし、フラつくあしでトボトボと、消耗品しょうもうひん窓口まどぐちかう。

 みじか人生じんせいだった。一度いちどでいいから、恋愛れんあいってやつをしてみたかった。


「どうしたどうした? いまにもにそうなオーラしやがって。おれっちの永遠えいえんのライバルが、そんなシミッタレたつらしてんじゃあぇぜ!」

 くろかわジャンかわパンツのおとこが、奇妙きみょうななめったポーズでこえをかけてきた。小型こがた洋弓ようきゅう背負せおい、きんめたかみ逆立さかだて、なぜかオレを『永遠えいえんのライバル』とぶ、近所きんじょ大学生だいがくせいだった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第5話 EP1-5 勇斗ゆうと災難さいなん/END

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