第15話

「あ、そうだ。私捕まっている間に怪人の様子を見てたんだけど、なんか薬みたいなの飲んでたよ」


 姫宮さんにそう言われて周囲を確認すると、確かに薬のようなものが見つかった。恐らくこの薬で怪人を強化していたのだろう。それから調べてみると、この廃墟で薬を開発していたことがわかった。どうやら先ほど倒したあの怪人が開発を行っていたようだ。あの人の言葉を話す怪人は変異種だろう。あの怪人を倒したことで怪人が強化されることはなくなるだろう。僕はそこにあった怪人を強化する薬を全て破壊した。


「えっと、影野くん。影野くんがゼロってわかって私もある決心をしたの」


 不意に姫宮さんがそう言ってくる。僕は姫宮さんの言葉を静かに待った。


「私もヒーローになりたい」

「え……でも、危ないよ」

「構わないわ。今度は私が影野くんを守れるパートナーになりたいの」


 姫宮さんの決断は尊い。尊重すべきだろう。だけど僕は心配が勝った。


「姫宮さんに何かあったら僕おかしくなっちゃうよ」

「なら、しっかりと守って」


 潤んだ姫宮さんの瞳。絡まる視線。僕はゆっくりと顔を近づける。姫宮さんが目を閉じた。僕はその麗しい唇にそっとキスをする。想いが伝わるように、丁寧に。

 月明かりに照らされて、僕たちは互いの愛を確かめ合った。

 

 姫宮さんがヒーローになると決断してから数日、姫宮さんは僕の彼女として僕の家に訪れていた。


「まさか真守が彼女を連れてくるなんてな」


 父さんは驚いていたけれど、母さんは歓迎してくれた。姫宮さんにスーツを支給し、これから一緒にひーろ活動をすることになる。最初は僕についてパトロールをすることになるだろうけど、僕と同じく姫宮さんも正体を隠してやるらしい。 姫宮さんも護身術をマスターしていたから、スーツに馴染むとすぐに怪人を倒せるぐらいにはなった。学校の女子の平和を守る為、僕たちは今日も活動する。

 頼もしいパートナーと共に僕はこれからもみんなを守っていくだろう。


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モブキャラの僕が実は女子が噂しているヒーローな件 オリウス @orius0

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