第4話
しばらく姫宮さんの部屋にお邪魔した僕は、姫宮さんと談笑し家を後にした。
さて、ここからはパトロールの時間だ。うちの学校の女子の安全を守る為に、僕は戦わなきゃならない。
物陰に入ってゼロに変身した僕は怪人レーダーを使って怪人の居場所を特定する。ここから一キロ先で怪人が出現しているようだ。退治しておくか。僕はそう思い、駆け足で現場に急行する。
ゼロスーツは身体能力を大幅に上げてくれる。このスーツのおかげで、僕は怪人を倒すことができる。
現場に着くとうちの学校の制服を着た女子生徒が怪人に襲われているところだった。僕は慌てて怪人と女子生徒の間に乱入し、怪人にキックをかます。
「ぎょええええ」
怪人は唸り声を上げて転倒する。
僕は腰を抜かしている女子に声を掛ける。
「大丈夫? 怪我はない?」
「はい、ありがとうございます」
どうやら膝小僧を少しすりむいているようだ。僕は懐から消毒液と絆創膏を取り出すと、女子の膝を治療する。
「応急処置だけど、これで大丈夫だと思うから」
「優しい」
女子の視線が僕に突き刺さる。怪人はまだ転倒したまま置き上がれていない。僕は魔力を手に集め、刀を生み出す。その刀で一気に怪人を切り捨てる。怪人は真っ二つになり霧散して消滅する。
「もう大丈夫だよ」
「ありがとうございます。助かりました」
「それにしても下校時間はとっくに過ぎてるよね。どうしてここに?」
「えっと、友達と遊んでいて」
そう言って頭を掻く女子はよく見ると見覚えがあった。青い髪に可愛らしい小顔、うちのクラスの
「噂のゼロ様を見れて嬉しいです。本当に強いんですね」
確かにこの姿で外崎さんと会うのは初めてだ。その外崎さんの熱いまなざしを受けて、僕は苦笑して顔を逸らす。
「えっと、送っていくよ。また怪人が出てこないとも限らないだろうし」
「嬉しいです。お願いします」
外崎さんはそう言って僕の前に立って先導する。僕はその後ろをついていく。レーダーを見る限り近くに怪人の反応はない。このまま送り届ければ問題なく帰れそうだ。
「うちの学校で噂になってるんですよ。ゼロ様のこと」
「様はつけなくてもいいよ」
「じゃあゼロ。うちの学校でゼロの話を聞かない日はないですよ」
「そこまで歓迎されて嬉しいな」
「その素顔がみんな気になってるんですよ」
そう言って外崎さんは振り返ると僕をじっと見てくる。
やはりゼロの正体は全女子の注目の的なのだ。
「残念だけど顔を見せるわけにはいかないんだ。ごめんね」
「うー残念。まあ、そういうミステリアスなところもいいんですけど」
外崎さんはステップを踏みながら歩く。その軽やかな足取りを見ていると、間に合って本当に良かったと思う。
「そうだ。うちのクラスにすっごくゼロのこと好きな子がいるんですよ。その子、人一倍怪人に襲われるから、よくゼロに助けてもらってるみたいで」
「ああ、姫宮さんだね」
「知ってるんですか」
外崎さんが驚いたような顔を見せる。姫宮さんのことはよく助けるから僕が認識していても問題はないだろう。
「認識してもらってるなんて杏奈凄い」
外崎さんは笑いをかみ殺すと、「明日杏奈に教えてあげよう」と楽しそうに笑った。
姫宮さんは目立つから、怪人たちもよく目を付ける。やっぱり抜きんでた美貌というのは、いいことばかりじゃない。こうして怪人に日々狙われるし、危険な目に遭ってしまう。
外崎さんも可愛いから、怪人に狙われやすいだろうけど、姫宮さんの抜きんでた美貌が怪人を引き付けてしまうのだろう。
その結果、外崎さんの危機が減っているから、外崎さんからすればいいのだろうけど。姫宮さんの苦労を思えば、胸が痛くなる。なんとかして姫宮さんが安心して暮らせる社会を守らなければ。
「えっと、あたしのことも覚えてくれてたり」
「ごめんね。君は初めてだから」
「ですよね」
がっくりと肩を落とす外崎さん。さすがに初対面の外崎さんのことを認識していたらまずいだろう。
「えっと、名前を教えてくれたら覚えておくけど」
「外崎です。外崎美緒」
「外崎さんだね。うん、覚えたよ」
「きゃー、ゼロに覚えてもらえた」
嬉しそうに小躍りする外崎さんを見て、僕は思わず微笑ましくなって頬が緩む。
そんな話をして歩いているうちに、外崎さんの家に辿り着く。
「ここです、あたしの家」
「良かった。無事に送れて」
「ありがとうございました」
目一杯頭を下げて外崎さんは僕が去るのを最後まで見送っていた。
人目のつかない場所まで移動し、僕はスーツを解除する。ゼロから影野真守に戻った。
今日も怪人から学校の女子を守ることができた。明日は外崎さんが学校でゼロのことを言いふらしているかもしれないな。
僕はそう思うと少し荷が重いような気がして足取りが重くなる。
期待してくれる女子たちの為にも、正体はバレないようにしないと。
僕はそう決意を固めながら夜の街に消えるのだった。
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