第2話
樹生さんは、私の双子の姉、伽耶の恋人だった。
その伽耶が、急な事故で逝ってしまったのが5年前。
樹生さんの悲しみは、実の妹の私よりもなお深いものだった。
見ているだけでも辛くて胸が傷んだ。
私と伽耶は、双子とは言っても、そんなには似ていなかった。
明るくて華やかで、誰からも好かれるタイプの伽耶は、服装も派手だったし、髪も染めていた。
伽耶が太陽だとしたら、私は月。
地味で何に対しても消極的な私は、友達も少なかったし、彼氏もいなかった。
家に遊びに来る樹生さんには、憧れのような気持ちを抱いていた。
伽耶の隣でいつも楽しそうにしてた樹生さんの焦燥しきった姿を見て、私はなんとか樹生さんを元気付けたくなった。
私は、美容院に行き、髪を染め、パーマをあてた。
髪を染めたのも、パーマをあてたのも初めてのことだった。
そして、伽耶の着ていた服を着た。
「伽耶……」
樹生さんは、戸惑いながらも、私の姿に喜んでくれたみたいだった。
それをきっかけに、私たちは良く会うようになった。
私は伽耶を見習い、無理をしながら明るく振る舞い、樹生さんもそれに応えるかのように、少しずつ、元気を取り戻してくれた。
私はそれが嬉しくてたまらなかった。
その反面、私はなにか悪いことをしているような罪悪感をも感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます