第29話




「おぉ、おぉ、まだ旅行から帰ったばかりだっていうのに、すまないな。」


「いえいえ…」


柊司さんのご両親は、私たちをとても歓迎してくれた。

お昼には、豪勢なお寿司をご馳走してくれた。




「たくさんの土産をありがとうな。

ところで、新婚旅行はどうだったんだ?」


「はい、芹香さんのおかげでとても楽しめましたよ。」


「そうか、そうか、それは良かった。

芹香さんとはうまくいきそうだな。」


「はい、もちろん。」


え……

一体、どういうことだろう?

お義父さんは、当然、知ってるんだよね?

柊司さんが、女性を愛せないことも、これは世間体を取り繕うための偽装結婚だってことも…

と、いうことは…同居人として、うまくいきそうかってこと?

……そうだよね。

だからこそ、柊司さんの答えも「はい、もちろん。」なんだよね?




でも、嬉しいな。

私にも言ってくれたけど、ご両親にも私のことをそんな風に言ってくれて。

妻としては愛されなくても、同居人としては好かれてるよね?




「芹香さんや、良かったら今度は、わしらと一緒に家族旅行に行きませんかな?」


「はい、ぜひ!お兄様のご家族たちも交えて、大勢で行きたいですね。」




(……なに?)




なんだか、その場の空気感が一瞬で変わった。

どうして?

私、何かまずいこと言った?

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