第27話

「じゃあ…映画でも見に行く?

それとも、買い物?

あ、そうだ。君のご実家に行こうか?

お土産もあるし…」


「えっ!?

う、うちですか?

ぼろ家ですし、狭いですよ。」


って、柊司さんは前に一度来たことあるから、そんなことはもう知ってるんだけど。

あの時はみんなで必死になって大掃除して、テレビもちょっと大きい奴に買い替えたんだよね…

そんなことしても、無駄なあがきだったんだけど。




「そんなことないよ。

それにね…僕、君のご家族が好きなんだ。

なんていうのか…みんな飾らなくて気さくで良いよね。

ああいうご家族の中で育ったから、君もそんな風におおらかで優しいんだね。」


「……え?」




今、なんとおっしゃいましたので…?

『おおらかで優しい』と聞こえたのは、幻聴でしょうか?




大雑把だとはよく言われてたけど、おおらかだったの?

それに、それに、何をもって『優しい』なんて言ってくれるんだろう?

う~、知りたい、知りたい!

でも、そんなこと、訊けない!




「……ん?どうかしたの?」


「え、え…な、な、なんでもありません。」


「何か都合悪いことでもあるの?」


「い、いえ、それじゃあ、明日はうち…に…あ…」


そうだ!私は、一応、沢渡家の嫁なんだから、行くならまずは柊司さんの実家だよ。

最初に私の実家に行くなんて、どう考えてもだめでしょ。

おぉ、危ない所だった。

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