第20話

「いたーーーい!」


私は、大きな声を出してしまった。




「え?ど、どうかしたの?」


「え…えっと…な、なんでもないんです。」


「……面白い子だね。」




(わぁぁ~……)




あぁ、なんて素敵な笑顔…!まさに天使の微笑みだね。

何度見ても、新鮮な喜びがあるよ。

それに、柊司さんって本当に穏やか。

だから、一緒にいてもリラックス出来るんだよねぇ…

今みたいに失敗しても、叱られることないもんなぁ。




お母さんも言ってた。

柊司さんは、絶対に良い人だって。

長年、客商売をして来たから、人を見る目はあるんだって。

穏やかだし、優しいし、気配りも出来る良い人だって。

確かに、友達も多いみたい。

招待客がかなり多かった。

それも、会社の人が仕方なく来てるような感じじゃなくて、親密な感じだったし、同性の人の方が多かったんだよね。

このルックスだから、女性にはモテると思うんだけど、女性も取り巻きみたいな感じじゃなかったもんなぁ…




考えれば考える程、今の状況が夢みたいに思える。

私…どうしてこんなに素敵な人と結婚出来たんだろう?







(やっぱり広いなぁ…)




キングサイズのベッドは、一人には広過ぎる。

大の字になっても、まだまだ余裕だもん。




でも…こうなることは最初からわかってたこと。

柊司さんは、女性を愛せない…

そうだ!『女性』を愛せないんだ。

私のことが嫌いなわけじゃない。

だから、悲観することはないよね。




(良かった~……)




柊司さん、私のこと、どう思ってるのかな?

いくら、お父さんが80歳になるまでに結婚しないといけないからって言っても、誰でも良いわけじゃないよね?

嫌いなら、きっと結婚しないよね?

異性として愛せなくても、人としても好き嫌いはあるはずだもんね。

もし、私のことが大嫌いだったら、いくらなんでもあんなに優しくはしてくれないよね?




ってことは、人としては、それなりに好かれてるってことだし、それってやっぱり幸せなことだよね。

寝室にひとりぼっちなことくらい、悲しむようなことじゃないよね?




うん、こんな素敵な部屋だし、明日からはヨーロッパ一周のハネムーン。

きっと豪華な旅行になるだろうね…




そんなことを考えながら、私はいつしか夢の世界に旅立っていた。

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