第13話

料亭には、まるで私たちのためみたいな雰囲気の良い庭があった。

多分、ここはお見合いスポットなんだろうね。

お見合いする二人が落ち着いて話せるように、考えて作られているようだ。




なぁ~んて、余裕があるみたいだけれど、そうじゃない。

すぐ隣にいる柊司さんからなんとか気を逸らそうと、そんなことを考えてみただけ。

実際は、緊張し過ぎて死にそうになっていた。




「……疲れたでしょ?」


「え?い、いえ…そんなことはありません。」


柊司さんの顔が見たいけど、恥ずかしくて見られない。

だから、私は俯いたままそう答えた。




「あそこに座ろうか?」


「はい。」


どこだか確認はしなかったけど、はいはい、どこでも座りますよ。

柊司さんが向かったのは、池の傍にある東屋だった。

柊司さんが腰を下ろした所から微妙にスペースを空けて座った。




「……それで…どうするつもり?」


「え?」


唐突な質問に、私は反射的に顔を上げた。

私の目の前に、柊司さんの綺麗な顔が…

あぁ…なんて美しい!

完璧だ!

もしかしたら、ソジュンを越えたかもしれない。

私は、今まで感じたことのないほどの幸せを感じた。

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