第44話




「腹が減っただろう?

多分、もうそろそろガザンに入ると思う。

酒場でもあれば、そこで何か食べて休めるんだがな。

ただ、ガザンは治安が悪いって話だから、気を付けろよ。

私の傍から絶対に離れるな。」


「は、はい。」


遠くに、小さな民家の明かりらしきものが見える。

国は滅んでも、住んでる人はいるみたい。




国境みたいな所があるのだろうと思ってたけど、それらしきものは何もなかった。

鬱蒼とした森の中は真っ暗で、なんだか不気味…

こんな所で、悪い奴にでも出会ったら、どうにもならない。




「止まれ…!」




不意に響いた低い声に、私は心臓が止まりそうになった。

私のネガティブな想像が現実になってしまったのだから。




お酒のにおい...

金属の触れ合う音…

まさか、それって……

嫌な汗が、背中を伝う…




「おとなしくしろ。

おかしな真似をしたら、痛い目に遭うぜ。」


「……サキ、言う通りにしろ。」


「はい。」


こんな状況で、抵抗なんて出来るはずもない。

足もがくがくで立ってるだけでも大変なんだから。




私達は為す術もないまま、後ろ手に縛られて、誰ともわからない奴らに連れて行かれた。

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