第43話

「ここから少し行ったら、ガザンの国だ。

ブラッサは、ジュミナの南端だからな。」


「そうなんですね。ガザンっていうのはどんな国なんですか?」


「ガザンは小さな国だ。

いや、国とはもう呼べないかもしれないな。」


フェルナンさんはどこか寂しそうにそう呟く。




「……どういう意味ですか?」


「ガザンの王は、大巫女アーリアの命に背いた。

そのせいで、ガザンは日照りに見舞われ、さらに、疫病が蔓延して、王族も皆、死に絶えた。」


「あの…大巫女アーリアって?

アーリアの命ってなんですか?」


「そんなことも覚えていないのか!?」


「は、はい。」


フェルナンさんの驚きようから察するに、大巫女アーリアなる人物は、よほど有名な人なのだろう。




「大巫女アーリアは、この世界の守り神のような存在だ。

彼女の神託により、この世界の王族の婚姻が決められる。

アーリアの神託に逆らうことは、神に逆らうのと同じことだ。

逆らって、無事でいられた国なんてひとつもない。」


大巫女アーリアなる人物は、ものすごい影響力を持ってるようだ。

王族だって、きっと好きな人くらいいると思うけど、アーリアの命が下ったら、何がなんでもそれに従わないといけないんだね。




(なんだかちょっと可哀想…)




王族なんて私には関係ないけど、少し同情してしまった。

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