第40話

確かに、私もおかしいとは思ってた。

人と接触するな!なんてこと、普通は言い遺すはずがない。




でも、それは、一体どういうことなんだろう?

素直に考えるなら…

フェルナンさんのことを守りたいってことよね…?

でも、誰から?

何のために?

そんなこと、私にわかるはずがない。




「思い当たることは、本当に何もないのですか?」


フェルナンさんは俯いたまま、何も答えなかった。




「あ、ご、ごめんなさい。」


「……ひとつだけ……」


「……え?」


「ひとつだけ……あるにはあるんだ。」




それが何なのか、すごく気にはなったけど、あえて訊くことはしなかった。

フェルナンさんもきっと話したくないだろうし、訊いても私に何かがわかるとは思えないから。




「そ、そうなんですね。それは…」


「しっ!」


フェルナンさんが、私の腕を取り、茂みの中に引き込んだ。

そこで、私は数人の足音を聞いた。

足音は、私たちの傍にどんどん近付いて来る。

私は恐怖にすくみ上り、その場で固く目を閉じた。




「急げ!やつらはきっとこっちから帰ってるはずだ。

何とか追いつくんだ!」




耳に飛び込んできた声に、私は思わず悲鳴をあげそうになり、それを懸命に堪えた。

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