第39話

それでも私達はまだ身動き一つしなかった。

フェルナンさんは、息が掛かる程傍にいるけれど、今はそんなこと、気にしてる余裕もない。




どのくらいの時が流れただろう…




「……ちょっと見て来る。」


フェルナンさんが急に立ち上がった。

私は、何も言えずただその場で固まっていた。




「……大丈夫そうだ。

今のうちに…」


「は、はい。」


私は、まだ体ががくがくしてたけど、無理やりに立ち上がった。




「裏道を通って帰ろう。」


「はい。」


フェルナンさんの言う通りに、私は彼の後を着いて行った。

そこは来た時とは違い、山の中の細い道だ。

いつの間にか夕暮れになっていたし、なんだかちょっと怖い気がする。




「フェルナンさん…さっきの人達は…」


あまりに不安だったから、私はフェルナンさんに声をかけた。




「……巻き込んでしまってすまない。」


「え?」


私には、フェルナンさんの言葉の意味がわからなかった。




「あいつらが狙ってたのは、きっと私だ。」


「えっ!?

ど、どうして?」


「理由は私にもわからない。

でも…おばあさんと私は、ずっと他の人間とは接触しないように生きて来たし、おばあさんが死ぬ時にも、大きな町へ行くな、人と接触するなと言い遺した。

……ずっとおかしいと思ってたんだ。

きっと、私には何か秘密があるんだと思うんだ。」


フェルナンさんは、苦しそうな声でそう言った。

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