第36話

「まずは、薬屋に行こう。

人が多いから、はぐれないようにな。」


「はい。」


確かに人が多い。

まぁ、都会と比べるとそうでもないけど、最近はとにかく静かな暮らしをしてたから、ちょっと刺激的。

どちらかというと、西洋風の顔立ちをした人が多いけど、意外と私みたいなハーフっぽい顔付きの人もいた。

だから、フェルナンさんも私を見て、驚かなかったんだと思う。

人混みをかき分けながら、私達は薬屋さんに向かった。




「やぁ、フェルナン。」


「こんにちは、グランテさん。」


「おや、見慣れない顔だな。」


そう言って、薬屋のおじさんが私の顔をまじまじと見る。




「あぁ、ちょっと事情があって、預かってる子なんだ。」


「事情って…おまえさんの良い人じゃないのか?」




(……え!?)




おじさん、なんてことを言うんですか!

恥ずかしいじゃないですか!

私がわたわたしていたら…




「そんなんじゃないですよ。」




フェルナンさんの冷静な声に、私の興奮も一気に冷めた。

そうだよね。

まだ知り合ってそんなに経ってないし、私は、特に綺麗ってわけでもない、どこにでもいるごく普通の女の子…

しかも、最近はメイク道具がないからすっぴんだし、おしゃれだって出来ないんだもん。

イケメンのフェルナンさんが、こんな私のことなんて相手にするはずないよね…

わかってたことなのに、なんだか妙に落ち込んでしまった。




(私、やっぱりフェルナンさんのことが好きなのかな?)

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