第37話

「じゃあ、靴を見に行こう。」


「……はい。」




薬屋さんに薬草を卸して、そこでお茶を出してもらった。

なんだか香りの良い紅茶みたいなもの。

フェルナンさんの家では、水しか飲んでなかったから、ちょっと気分がほっこりした。




あたりは少しずつ日暮れに近付いていたけれど、商店街はまだ十分賑わっていた。

見たことのないような品物もたくさん並んでいて、私はそれらを興味津々で眺めていた。

これが観光かなにかで、お金もそれなりに持ってたら、きっと楽しいショッピングが出来ただろうに。




「あ、あそこに靴が売ってるみたいだ。」




フェルナンさんの指さす先に、靴屋さんがあった。

並んでいるのは、今、履いているのと似た感じの靴だ。

色も地味なものしかないし、どれも飾りの一つもついてない愛想のないデザインだ。

私のいた世界では、カラフルな色や可愛いデザインのものがいっぱいあったのに。

って、そんなことを思っても仕方がない。

ここにはこれしかないんだから。

靴を手に取って見ていたら、フェルナンさんが私の腕を不意に掴んだ。

しかも、けっこう強い力で。




「あっちにもあるから、向こうのを見てみよう。」


「え?あ、はい。」


まだ見てる途中だったけど、私は素直にその言葉に従った。

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