第19話

「そ、そういえば、そうですね。

や、やっぱり名前は大切なものだから、憶えてたんでしょうかね。は、はは。」


私はそう言って、精一杯の笑みを浮かべた。




「確かに、そうかもしれないな。

小さな頃からずっとその名前で呼ばれてたから、記憶に残ってたのかもしれないな。

他には、何を憶えてる?」


「え?えっと……」




どういえば良いんだろう?

名前のことは納得してくれたみたいだけど…下手なことは言えないし…




「あ、い、痛い…考えると頭が……」


私は、頭を抱えて俯いた。

なんといえば良いかわからないから、芝居をしたんだ。




「大丈夫か!?

無理をすることはない。

きっと、そのうち思い出せるだろうから…」


「は、はい…」




フェルナンさんを騙すような真似をして、少し心は痛んだけれど…

でも、今はこうするしかない。

信用してないわけじゃないけど、フェルナンさんが完全に信用出来る人だとわかったら、その時に本当のことを話して謝れば良い。

今はまだ私のおかれた状況についてもまだよくわかってないんだもの。




(フェルナンさん…ごめんなさい。)




私は心の中で、フェルナンさんに頭を下げた。

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