第18話

フェルナンさんが出してくれたのは、豆と野菜の切れ端みたいなものが入った味の薄いスープと、かなり固くなったパンだった。

お世話になってる以上、文句は言えない。

どう考えても、フェルナンさんは裕福ではなさそうだ。

なのに、私を助けてくれたなんて、やっぱり良い人だよね。




「あ、あの…フェルナンさんは、お仕事は何をされてるんですか?」


「山で薬草を採ってる。」


「そうなんですか。」




薬草を採ってるってことは…

それを例えば薬屋さんに持って行ったりする仕事なのかな?

薬を作ってるわけじゃないんだよね、きっと。




「昨夜は、ブラッサの町に届けに行ってたんだ。

だから、あんなに遅くなった。」


「そ、そうなんですね。」


よくわからないけど、きっとブラッサっていうのは遠い町なんだろう。

でも、そのおかげで私は助けてもらえたわけで…

やっぱり、運が良かったとしか思えない。




「あ、良かったらどうぞ。」


私は小林さんにもらったクッキーをフェルナンさんにすすめた。




「ありがとう。」


フェルナンさんはクッキーを口に運んだ。




「うまい!こんなうまい干菓子は初めてだ。

誰が作ったんだ?」


「え…と、それも憶えてないんです。」


「これはよほど腕の良い者が焼いたのだろうな。」


フェルナンさんはよほどクッキーを気に入ったのか、ほとんどひとりで食べてしまった。




「それで…君はどの程度、記憶を失ってるんだ?

名前は憶えてたよな?」


「……え?」




あ、そうだった!

私は、記憶喪失ってことにしてたのに、さっきついうっかり名前を言っちゃった!

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