第4話




「内山さん…これ……」


不意に聞こえた囁くような声に、私は顔を上げた。




「小林さん……」




あと10分で退社時間という時…小林さんが私の傍に来て、小さな紙袋を押し付けた。

私は、それをさっと机の下に仕舞った。

なぜだかわからないけど、隠さなければ…!と思ったから。

多分、ホワイトデーのお返しだろう。

でも、どうしてこんなにこっそり…?




まるで、小林さんと秘密を共有したかのような雰囲気を感じながら、私の胸はときめく。

だけど、私は素知らぬ顔をして、パソコンに向かっていた。

私の目は、ディスプレイの何も見てなかったけど…




やがて、退社時間を知らせるチャイムが鳴り…




「この前はチョコをありがとう!」


大きな紙袋を持った小林さんが、女子社員の元に何かを配って歩く。




「内山さん、チョコ、どうもありがとう!」


「えっ?は、はい。いえ…その…」


小林さんは、私の所にも来て、小さな包みを手渡してくれた。




あれ?これがホワイトデーのお返し?

それじゃあ、さっきのは…?




疑問を抱えつつ、私は帰る支度に取り掛かった。

カーディガンに包むようにして、私は紙袋をロッカールームに運んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る