第34話 忍、目覚める

 「おーいカケルー?おい・・・チッとっとと起き上がれこのバカがッ!!!」

 「いってぇぇぇぇ!何すんだテメェ!!?」

 「いくら読んでも起きねぇからだろうが!!!」


 ダイに顔を思いきり踏んづけられて目を覚ましたカケルは辺りを見渡して暗くなっている事に気がついた。


 「あれ?夜?」

 「お前ずっと寝てたんだよ」

 「あーマジか」


 股間からくる痛みで仮面の忍に蹴られてからの意識がない事を思い出してカケルは頭をかいた。

 周囲を見渡したが仮面をつけていた忍は既におらず、周りが夜になっていることからかなりの時間が経過してしまったことがわかった。

 そしてカケルは連れていた男の忍をあのビルに残したままだと言う事を思い出し起き上がった。


 「あいつは!?あの金ヅ、・・・忍どうした!?」

 「そいつならここだよ」


 ダイは肩に背負っていた男をカケルの方へ投げ捨てた。


 「おいおい、お前男の扱いもう少し何とかしろよ」

 「うるせぇな、男背負うなんて気持ち悪い事してやったんだこんくらい多めに見ろ」

 「はぁ。・・・にしてもあの忍者達はどうなったんだ?」

 「あ?俺が負けるとでも思ってんのか?お前と一緒にすんじゃねぇよ」

 「俺も負けてねぇよ!隙つかれちまっただけだ!」

 「で気絶してんなら負けだろ」

 「だーかーらー!違うんだよ!まさか、、、」

 「?、まさか何だよ?」

 「いんや。まぁ油断はしてたからな」

 「???」


 女で胸まで掴んでしまった事を言いそうになったカケルはこのまま話せば、ダイに確実に殺されると考えて、それ以上何も言う事なく立ち上がり忍を背負って黄昏荘に帰る事にした。


 「あ!おいお前!まだ話は終わってねーぞ!!!」

 「そんなことより!今はこいつの事の方が大事だろうが!!!」


 ーー


 黄昏荘に戻った二人は夜ご飯を食べている黄昏荘の住人をよそにそそくさと二階に上がりカケルの部屋で忍を寝かせた。

 

 「にしても誰なんだろうな八咫烏に依頼した組織っつーのはよ」

 「それなぁ、しかもこんな男を狙って雇うなんてな。だがまぁ俺達が連れてけば八咫烏に支払われる報酬を俺達がゲット!できてメイド代チャラできるんだからまぁいいだろ」

 「カケルご飯だよ?」


 突然、扉を開け入ってきた葵に呼ばれカケルとダイの二人は急いで忍を布団に入れた。

 不思議に思っているであろう葵の背中を押してご飯を食べる為に部屋を出ようとした時だった。


 「ん、」


 布団の中で寝ていた忍の男が目を覚ました。

 起き上がった忍の男は辺りを見渡して見知らぬ部屋と人間がいる事に気がつきすぐに臨戦体制となった。


 「な、何者だ!」

 「落ち着けよ俺はカケル。こっちの女は葵」

 「俺はダイだ」

 「くっ、まさか少し眠っている間に敵地まで連れてこられようとは。だが貴様らが知りたい情報は何一つ喋る気はないぞ!!!」


 何を言っているのかさっぱりわからない三人は顔を見合わせた。

 とりあえず落ち着かせようと思ったカケルは近づこうとした時だった。


 「近づくな!土遁"地盤振動の術"!」


 男がそう言って地面に手をついた時だった。

 黄昏荘全体が突然揺れ出し始めた。更に次々とひび割れていき黄昏荘はどんどん崩れかけていった。


 「うわっと!」

 「あ・・・」

 「葵危ねぇ!!」


 ひび割れに落ちかけた葵を抱きながらカケルはダイと共に忍の男に術を止めるように説得をしようとしたが、男は聞かず窓から外へと逃げ出した。


 「おい!待て!」

 「どうすんだカケル!金ヅルが逃げちまったぞ!」

 「分かってるよ!待てコラ!!!」

 「しゃーねー俺もいッ!?」

 「ダイこれどうゆう事?」

 「逃しませんよ?」

 「説明してもらうぜダイ!」


 カケルも忍の男の後に続いて窓から飛び出し跡を追った。ダイも後を追おうとしたが、いつの間にか上に上がってきていた黄昏荘の面々に捕まってしまった。

 一方、カケルは飛び出して行った忍を説得するために草原で相対していた。


 「落ち着けよな?俺達はあんたを助けたかっただけなんだよ」

 「黙れ!問答無用!土遁"岩針雨"」

 「うわっ!!?」


 地面から細かく小さい針が何本も飛び出してカケルを襲った。

 カケルは後ろに下がりながら落ち着いて貰うようにもう一度声をかけようとした。しかし忍の男はその言葉を聞く事なく次々と忍術を使い襲ってきた。


 「くっそ、いい加減話し聞けよ!!!」

 「黙れ外道めが!貴様ら我が主君の事を知るために捕まえたのであろう?だが残念であったな、そう簡単には拙者はやられぬ!土遁"岩分身"さらに"石像守護の術"!」


 次の忍術を使った男の後ろには数十を超える岩で出来た自分の分身が作られた。更にその一つ一つが巨大化していき十メートルを超えた石像が何体もカケルに襲いかかってきた。

 石像は一体一体が巨体な事を意に返さず早く動き、巨大な拳でカケルを狙って攻撃を仕掛け続けた。

 石像の腕に乗り、肩を渡りながらもカケルは出来るだけ刺激しないように立ち回っていた。


 「お前、いい加減にしろよ!?」

 「えーい黙れ黙れ黙れぇぇぇい!我が主をお守りするのが拙者の役目ぇ!貴様のような見るからな怪しい男の話など聞かぬ!どうしても聞いて欲しくば我を倒してみやがぁれぇ!」

 「何だよそれでいいなら早く言えよ。うし、分かった」


 カケルは巨大な石像の拳を避けるのをやめ、自分の真上から降り注いできた拳を自身の拳で粉砕し、砕け散った石像の破片を全て他の石像達に投げつけ続け、次々と石像を破壊していった。

 破片が無くなれば次の石像まで飛び顔を破壊し、更に破片を飛ばし続け、全ての石像はこうして全て破壊された。


 「ふぅー。いい運動したぜ」

 「が、がぁぁぁぁ!ば、馬鹿な!?せ、拙者の石像無限陣が・・・や、破られただと・・・!!?」

 「いやいや無限にいなかったじゃん。まぁいいや、これで話聞いてくれるんだろ?」

 「ぐ、うぬぬ、、、くうううううう!仕方がない!少しだけだぞ!少しだけ!」

 「おっけぇー、はぁぁぁ疲れた。とりあえずお前が飛び出してきた黄昏荘に戻るぞ」

 「うむ。・・・ってどこだそれは?」

 「いいからついて来い」


 そうして二人は黄昏荘に帰るため帰路へ歩いて行った。

 その後ろ姿を仮面をつけた忍に監視されている事も知らないまま・・・・・・。

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