第33話 八咫烏
「な、いきなり何すんだよお前!!!」
「黙れ。その男を渡せ」
「はぁ?いきなりクナイ投げてくる野郎に渡すわけないだろ!」
「落ち着けよカケル。どうみても同業者だろ?多分、映画の撮影か何かだよ」
ダイに諌められたカケルは自身が抱き抱えている男と目の前にいるコスプレイヤーを見比べてみた。
服は皆黒で統一されており、中心にある仮面をつけた奴以外は抱き抱えている男と大差ないクオリティの服だった。
「た、確かに映画の撮影だったのか」
「これは俺たちが悪りぃよ。よく考えてみりゃあんな変なところで寝てるわけないしな」
「それは確かにその通りだな。とゆうわけですみません勝手に邪魔しちゃって〜。でもあんたらもいきなりクナイ投げずに声かけてくれたら良かったのに」
「何を勘違いしているんだ?我々は"八咫烏"だ。映画の撮影なんてしていない」
八咫烏。古くは日本を裏から支配されていたとされているフィクサーの様な集団。安倍晴明の師匠にあったとされる賀茂一族の祖先が始まりとされる諜報機関。
現在の日本ではどこの組織にも所属しない中立組織となっており、依頼を受ければどんな組織だろうと手を貸すと噂されている。
「その八咫烏が何の様だよ?まさかこいつも八咫烏?」
「違う其奴はとある組織からの依頼で回収しにきただけだ」
「ふーん・・・よしじゃあその組織に俺達が届けるわ!あんたら帰って?」
「あ?」
「何?」
カケルもそこそこだが、裏社会には精通している。当然八咫烏の事も知っていた。八咫烏は高額な値段でのみ依頼をする事が出来ると知っていたカケルはメイド喫茶で支払った分、もしくはそれ以上の金額を手に入れられる可能性があると踏んでいた。
「教えてくれよ?どこの組織だよ?あんたらに依頼なんて出来る所なんて日本にはかなり限られてるだろ?」
「・・・貴様、我々を知っているという事は裏の者か?」
「いんや。グレーゾーンの人です」
「???」
「裏でいいだろお前。何でも屋なんて胡散臭い商売してんだから」
「どこがだよ!?」
「捕えろ」
仮面の忍の掛け声と共に二人に忍達が襲いかかってきた。
カケルは男を抱き抱えたまま忍達がいた方とは別の建物の屋上へジャンプして飛び乗りそのまま忍達とは別の方向へと走った。
忍達は入れ違いとなってしまった対象を追おうとしたが目の前にいる男はそれを許さなかった。
「たっく、あいつはよぉ。まぁいいか金が手に入るなら文句わねぇ、わなッ!!」
ダイが他の忍達の足止めをしている頃、カケルはビルとビルを高速で飛びながら黄昏荘まで向かっていた。
しかし飛んできた三本のクナイによってその足は止められた。立ち止まり前を向くと仮面をつけた忍が目の前に立っていた。
「驚いたな。足には結構自信があったんだけどな」
「奈良の時代より続く我々を舐めるな」
「舐めてはいないんだがな」
「ならば貴様はただ注意不足なだけと言うわけか」
注意不足?そう言われたカケルは足元に刺さっている三本のクナイを見た。クナイには何か白い紙のようなものが貼ってあり爆発が起きた。
ビルの屋上が爆発によって崩壊しカケルはビルの中に落とされた。
「ゲホッゲホッ!くそやられたぜ」
幸い怪我はなかったが、抱き抱えていた忍が少し遠くに転がっているのをみて急いで近づこうとしたが、再びきたクナイにそれを阻まれた。
「仕事の邪魔をするな」
「あんたらこそ稼いでんだろ?なら貧民に少しくらいわけてくれや」
「我々、八咫烏は命じらた事は必ずやり遂げなければならない。悪いが貴様の事情に付き合うつもりは毛頭ない」
「いてッ!!?」
仮面の忍が右腕を後ろに引くとカケルに向けて先ほど投げられた筈のクナイが突然地面から抜けカケルを斬り裂きながら手元に戻ってきた。
「手品?・・・いや忍術ってやつか!」
「残念だが違う。勿論種明かしをするつもりもない!」
更に数を増やして投げられたクナイは今度は一つ一つが真っ直ぐではなく部屋全体を蛇のように動き回るようにしてカケルを襲った。
「くっ、軌道が読めねぇ!?」
「"湾曲苦無"。まるで生物のようにクナイを動かす我が奥義だ。さらに」
「!?、何だ体が動かねえ???」
クナイを避けながら動き回っていたカケルだったが突然体が動かなくなってしまった。
「どうなって?、痛ッ、ワイヤー?」
無理に動こうと腕を動かしたカケルだったが、チクリとした痛みを腕に感じ見てみると細い糸のようなものが自分の身体中に張り巡らされていた事に気がついた。
「"絡新蜘蛛の糸"だ。八咫烏が使う事を許された呪装の一つだ」
「じゅ、そう・・・?」
「知る必要はない。この場で死ぬのだからな」
そう言った仮面の忍の下半身がみるみる内に蜘蛛のように変わっていき、部屋全体に蜘蛛の巣を張り巡らせた。
「な!?バケモンじゃねーか!?」
「この糸はワイヤーのように鋭い。更にもがけばもがく程絡みつく。そして最後には全身が糸で切り裂かれて終わりだ」
全身に絡みつく糸によって体は動かず、それどころかどんどん切り裂かれている状態。更に遠方からのクナイにはよる必中攻撃。
勝利を確信した仮面の忍は脳天にクナイを投げ止めを刺そうとした。
しかし、
「ご丁寧に、どうもッ!!!」
「・・・何?」
本来ならば無理に動かせば真っ二つに切られるてしまう筈だった。しかしカケルはその糸を無理矢理引きちぎった。
「バカな」
「いててっ、悪いな少しばかり体が丈夫でさ」
カケルの持つnoise"身体強化"によって常人よりも肉体の強度がはるかに高いカケルにとっては多少肌が切れる程度の糸でしかなかった。
カケルはすぐさま仮面の忍の目の前まで飛び、やり返しの意を込めて殴り飛ばした。
仮面の忍は男の拳を両腕で咄嗟に守ったがあまりの威力にビルを二、三個貫通しながらひとけの無い鉄塔まで飛ばされた。
「ぐ、何だこの力は?」
男の拳を受けた両腕は痺れが取れず、もろに受けた右腕の方は完全に骨が砕けていた。
蜘蛛の糸とそこら辺にあった木で簡易ギプスを使った仮面の忍は起き上がり鉄塔を見上げた。
「結構飛んだな。・・・それでまだやるか?」
見上げた先にいる男はかすり傷はついているがそれでも致命的は傷をつけれてはいない。
反対にこちらどうだ。両腕は未だ動かず、絡新蜘蛛の糸は意味をなさなかった。
自分では敵わない。そう感じた仮面の忍は撤退する為に何とかカケルの隙を狙おうと考えた。
「貴様、何者なんだ」
「だからただの何でも屋だって」
「ただの何でも屋が絡新蜘蛛の糸を引きちぎれる筈がないだろ!」
「まぁどうでもいいや。それで教えてくれるか?」
「くっ、!」
その直後だった。
カケル達がいたビルの方から突然、突風が吹いてきた。
「あ」
「な!危なッ!?」
突然の事でカケルはそのまま仮面の忍の上にバランスを崩し真っ逆さまに落ちてしまった。
ドカンッという音共に二人は互いにぶつかりそのまま倒れた。
「いってて、お、おいあんた大丈ッ、う、ぶか・・・?」
「ツッ〜〜〜」
カケルは起き上がる時に手をついた部分が妙に柔らかかったのに違和感を持った。まるでマシュマロのようで丁度良い触り心地を不思議に思ったカケルは目を開けると顔を真っ赤にした女の子の上に乗っかって胸を揉んでいた。
「・・・あれ?」
「う、うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「かはっ!!!」
そして股間を思いきり蹴り飛ばされたカケルはそのまま意識を失った。
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