第6話 甲板上の戦い

 オークション会場では激しい戦闘が繰り広げられていた。

 会場に来ていた人達はみな一斉に避難をし始め、ステージでは子供達を守りながらカケルが警護相手に暴れていた。


 「じゅ、銃は使うなよ!大事な商品に当たったら大変だ!」

 「し、しかしこ、こいつとんでもぐぁ!?」

 「オラァ!どうしたどうした!?銃でもミサイルでも使わねーと俺はたまらないぜぇ!!!」


 商品である子供達が後ろにいることから銃火器の使用ができずプロの警護達は次々とカケルによって倒されていった。


 「何なんだあの力!止めろこれ以上奴の好きにさせるな!」

 「へへっ何人かかってきても無駄だぜ!近接ならお前ら程度に負けないんだよ!」

 「あやつまさか、能力者か?」

 「はい、恐らくは。出なければ人一人を遠くまで殴り飛ばす事はできないでしょうからね」


 2階の閲覧席でステージの様子を伺っていたアンドレアスはアルダーと共にカケルの戦いを見ていた。


 「どうだ行けそうかアルダーよ」

 「勿論。あの程度のガキ、私の相手にもなりませんよ」

 「ふぅー、大体片付いたな」

 「く、くそ。おい!お前達せっかく高い金払って雇ったんだぞ!それをたかがガキ一人になんてザマだ!こ、こんなのアンドレアス様に見られたら、、」

 「その通りだ。お前はもう用済みだ司会者くん?」


 いつの間にか司会者の後ろにいたアンドレアスとアルダーによって司会者は撃ち殺された。


 「チッ、思ったよりも早く来たな。おいガキども!少し離れてろ!あ、あと物陰に隠れてろ!」


 カケルの言う通り子供達は少し離れたところの物陰に隠れ、それを確認したカケルはアンドレアス達と対峙した。


 「ヘイ、ボウイ。やってくれるじゃないか?これ以上やられちまうと内の雇い主が食いっぱぐれるんでね、ここで死んでもらうぜ?」

 「やってみろガキを売りに出して娯楽にしてる奴に俺は負けねぇよ」

 「言うじゃないか中々かもが座ってるね」


 そう言うとアルダーは自身の足元に魔法陣を出し、そこから多くの銃火器を自身に装着させた。


 「待て待て待て!!んなもん一気にぶっ放したら船ぶっ壊れるかもしれねーぞ!?」

 「安心しな。そんなやわな作りはしてねーよ!そうゆうわけだ。あばよボォウイ」

 「いっ!?やべ!?」


 一斉に発射された銃弾はステージを半壊させた。煙が晴れてボロボロとなったステージが姿を現した。

 

 「ははっ!よくやったなアルダーよ。奴め跡形も残ってないではないか!!!」

 「まだですよ。あの男、咄嗟にステージの床を殴って壁にして防ぎましたから。ただ無傷とまでは行かなかったようですがね」


 カケルが立っていた場所まで歩き、そこに血の痕がある事を確認したアルダーは久しぶりの実戦に心躍らせながらアンドレアスに伝えた。


 ――

 

 「よし、ここまでこればとりあえずは大丈夫だろ」


 アルダーの一斉射撃と同時にステージから離れ、船の甲板まで子供達と共に来たカケルは先に避難していたサーシャと合流して子供達を引き渡していた。


 「じゃあ、子供達のことよろしくお願いします。俺が何とか時間稼ぐんで」

 「しかし、カケルさんその傷では・・・」


 サーシャはカケルが手で押さえている横腹を見ながら共に逃げようと提案しようとしたがカケルによって却下された。


 「アルダー以外にも会場外を警備してた奴らはまだ沢山いる。ここで俺と一緒にいることがバレたらその子達だって助からねーだから俺が何とかする。だからその子達を何としてでも守ってやってください」

 「しかし、」


 その時だったカケルとサーシャが話をしているとステージの外にいた警備員が何人も船の看板に現れ始めた。

 カケルは囮になる為、警備員の前に姿を現した。サーシャはカケルの頼みを聞き入れる事にし、自分の部屋まで子供達を連れて行った。


 「オラオラオラァ!!かかってこいやぁ!」


 サーシャ達が逃げたのを確認したカケルは警備員が銃を抜くよりも早くに拳で殴り飛ばしながら、次々と警備員を倒していった。

 その時だった、カケルと警備員の目の前に手榴弾が投げつけられ警備員を巻き込みながら爆発した。


 「ッ、」


 全身に走る鈍い痛みと共に目を覚ましたカケルは辺りを見渡した。警備員たちは皆倒れ意識を失っていたが命に別状はない様子だった。


 「まったくボウイには驚かされるよ。いきなり投げられた手榴弾をまさか素手で掴んで空へと投げるとはね」

 「ぐっ、お前こそ、仲間ごとやるなんて、な」

 「勘違いをしないでくれるかな?俺はあくまでアンドレアスに雇われたのであって、こいつらには雇われてないんでね。金の発生しない関係を仲間なんて思えるわけないだろ?」


 全身に走る痛みに耐えながらカケルは立ち上がり、それを見越していたアルダーは銃を構え、カケルに向かって銃弾を放った。ギリギリでよけ物陰に隠れた。


 「逃げてばかりじゃあ俺は倒せないぜボウイ?」

 「うっせぇ!黙ってろこのハゲ!大体お前魔術師なんだろ?何で魔法使ってないんだよ!」

 「ハッハッハッ!これは傑作だな!俺が魔術を使ってないだって?そんなわけないじゃないか!しっかりと使っているぜ?あ、そうか傷の痛みでわからないのか?」


 大笑いしながらアルダーに言われたカケルは自身を見渡しある事に気がついた。


 「・・・銃弾か?」

 「正解だぜボウイ。俺が得意としているのは投影魔術さ!これは便利だぜ!?すぐに消えちまうからな相手を殺しても俺がやったという痕跡が全く残らねぇし、玉をいちいち補充する必要もねぇしな!!」

 「なるほどな!だったらこれでもくらいやがれ!」


 アルダーが声をした方を見るとカケルは物陰からいつの間にか出ており、上空からアルダーに向かって踵落としを喰らわせた。


 「オウ!?」

 「まだまだぁぁぁ!!!」


 さらに追い討ちをかけるようにアッパーを喰らわせ、腹を蹴りアルダーを壁まで吹き飛ばした。


 「どうだコラ、少しは効いたか?」

 「ハッハッ!いいねぇ、確かに少しは効いたぜ?」


 首を鳴らしながら現れたアルダーは平然とその場に立っていた。


 「嘘つけよ。ピンピンしてんじゃねーかよ」

 「ボウイこそ、その傷でそこまでの動きが出来るなんて人間じゃないな?」

 「純度100%の人間じゃボケが!!!クソ、やっぱこの傷じゃあいつも見たいな力が出ねーな」

 「さて、第三ラウンドを始めようかボウイ?」

 「あぁ、いいぜ?とことん野郎じゃねーか」


 アルダーは会場にいた時のように銃火器をその身に纏い、カケルはアルダーを壁まで吹き飛ばした時に飛んできたドアを広い走り出した。


 ――


 その頃、子供達と共に自分の部屋に戻りアリーシャを起こして救命ボートがある場所へと到着した。


 「さぁ、早く皆この船に乗ってください」

 「わたちもですか?」

 「勿論です。この船は危険ですから」


 子供達を船に乗せて救命ボートを船から外す為に近くにあった装置を作動させようとした時だった。

 装置に銃弾が飛んできて装置が破壊された。


 「そこまでですサーシャ様。大人しくご同行してください」

 「もう見つかってしまったのですね」


 数名のspが銃を構えながらサーシャを囲んでいた。


 「サーシャ様、アンドレアス様にはまだ伝えてはいません。今ここで大人しくその子供達と共にご同行していただけるのでしたら、」

 「なりません。これ以上こんな馬鹿な真似はアンドレアスにもさせたくないんです。それに今甲板では命をかけてカケルさんが戦ってくれているのです。それなのに私がここで逃げるわけには行きません!!!」

 「そうですか・・・残念です」

 「ママ!逃げて!」


 sp達が一斉に銃を構えサーシャを撃ち殺そうとした時だった。

 サーシャの隣の手すりにいつの間にか黒き鎧に身を包み、青い炎を纏った侍のような格好をした男がいつの間にか手すりに立っていた。


 「え、?」

 「何者だ貴様!」


 一人のspが銃を発射しようとした時だった。銃を持つその手はいつの間にか床に落ちていた。


 「え、う、うわぁぁぁぁぁ!!!」

 「・・・抹消する」


 そう言った瞬間、黒き侍は携えていた刀を抜きsp達を一瞬で斬殺した。

 サーシャの足元はsp達の血溜まりによって染められきっていた。


 「あ、あな、たは?」


 サーシャの問いに対して、振り向いた黒き侍は何も言わずにただじっとサーシャを見るだけで返答もせずその場から消えた。


 「・・・な、何者だったのでしょうか」

 「ママ!急いで!」

 「え?」


 アリーシャの声に振り返ったサーシャが見たのは救命ボートが設置されていた部分が斬られており落ちかけていた。


 「まさかさっきの方が?」

 「ママってば!!!」


 アリーシャの叫びによって我に返ったサーシャは急いで救命ボートに乗り込んだ。

 豪華客船を後にしたサーシャは甲板で起きている爆発を見ながらカケルが無事に祈るように神に願いながらその場を後にした。

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