第5話 水平線のウエイター

30分後


 ウエイターの仕事をうんこと言ってトイレに行くふりをして俺は船の甲板まで上がってきた。


 「んーと、協力者はっと」


 辺りを見回して見ると甲板に金髪の髪を腰まで下ろした息を飲むのほどの美貌を持った女性がいた。向こうも俺に気がついたみたいでこちらに近づいてきた。


 「初めまして、アンドレアス・ディヴァインの妻のサーシャ・ディヴァインと言います」

 「初めまして俺は警察官の立派なパシリ、カケルと言いまーす。てあんたアンドレアスの妻?え、人妻!?嘘だぁぁ!でしかももしかして協力者!?」

 「は、はい。あの人をどうしても止めたくて、協力してくれますか?」


 その後、俺はサーシャさんの部屋に上がらせてもらい今回の件に関しての情報を貰うことにした。


 「さ、どうぞ入ってください。部屋少し散らかって居ますが気にしないでくださいね」

 「お邪魔します」


 部屋に入ると中はウエイター達用の部屋とは違い豪華な装飾が施された場所となっていた。その部屋のベッドを見てみると一人の小さな少女が眠っていた。


 「あの子は?」

 「あの子は私達の子供のアリーシャって言うの。さっきまで会場でたくさんご飯食べてたんですけどお腹いっぱいになって今は寝ているの」

 「なるほどな。おっとわりぃどうやってアンドレアスの奴を止めるんだ?」

 

 部屋にある椅子に座り、俺達は今回の人身売買を止めるための作戦を考えた。

 サーシャさんから聞いた話だが、元々アンドレアスは身寄りのない子を保護する施設の経営を行っていたらしいが、ある日を境に人身売買に手を染め始めたらしい。


 「それからとんとん拍子でここまで上がっていき、遂には今回のようなオークションまで・・・」

 「それをあの子は?」

 「勿論知りませんよ。あの子にはこんな世界見せたくないですから」


 アリーシャを見るサーシャさんは慈愛に満ちており、心からアリーシャを愛しているのだとわかった。しかしだからこそカケルには疑問に感じた事が一つあった。


 「なら何で連れてきたんだよ。それにあの男と別れれば済む話じゃね?」

 「・・・それは出来ないんです」

 「何でだよ?どこに居ても見つかるからか?」

 「いえ、そうゆうわけではないのですが・・・」

 「まぁいいやそれよりもどう止めるんだ?警護は超厳重しかも装備も一流、あれ掻い潜ったとしても一発で捕まるが落ちだぜ。それにそもそも俺達で止められるのかよ」

 「それだけじゃないんです。アンドレアスには直属の護衛が一人いるんです。名をアルダー、アメリカ国籍の魔術師です」

 「一流の警護に魔術師が相手か厄介だな」


 俺が何かいい方法はないものかと考えているとふと妙な視線を感じ、顔を上げるとサーシャさんが不思議そうにこちらを見ていた。


 「・・・なんすか?」

 「あ!ご、ごめんなさい。いやね相談した刑事さんが既に作戦は決まってるって言っていたので」

 「え、俺聞いてないぜ?」

 「そうなの?あなたがここに来たら後はオークションを見せれば済むって言ってたのだけど」


 あの野郎九条・・・まさか俺が子供売られるの見て暴れると思ってるのか。俺だってそうゆう世界があることくらい痛いほど知ってんだからそんなことするわけないものをバカめ!


 「あーその刑事さん少し頭いかれてんですよ。だから俺みたいな一般人だって巻き込んじゃうんです」

 「あら、そうだったの優秀そうに見えたのだけど」


 俺が腹いせにもう少し悪口言ってやろうとした、その時だった。ドアを叩く音が聞こえてきた。


 「サーシャ様。サーシャ様。アンドレアス様がお呼びです。すぐにアンドレアス様のお部屋までいらしてください」

 「は、はいすぐ行きます。カケルさんはしばらくこの部屋にいて下さい。時間になりましたら呼びに来ます」

 「え、ちょ、俺うんこで抜け出してきてんだけどちょ、ちょっと待っ、、、行っちゃったよ」


 カケルは変な混乱を招かない為しぶしぶサーシャの言う通りしばらくの間、部屋で大人しくしていることにした。


 「しっかし、どうすっかなーそもそもどうやって止めんだよ、、、ん?」


 その時だったカケル椅子に座って考え事をしていると足元に小さな少女が立っていたのに気がついた。


 「・・・え?」

 「お前・・・誰だぁぁぁ!」


 小さな少女はそう叫びながらカケルの脛を思いっきり蹴り飛ばした。


 「いっっってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 思っていた以上の威力で蹴りを決められたカケルは思わず後ろに倒れてしまったい、涙目で蹴った本人を睨みつけた。


 「何すんだ!このガキャャャ!!!めちゃくちゃ痛かったよ涙目になっちゃったんだぞ!」

 「黙れ犯罪者め!わたち達の部屋に勝手に入り込んどいて何を抜かちますか!」


 そのまま飛びかかってきた少女、アリーシャは回し蹴りをカケルに喰らわせようとしたが、カケルは受け止めアリーシャを捕らえた。


 「落ち着けって!俺はお前のお母さんに頼まれてここの部屋にいるんだよ!」

 「そんな嘘ついたってむだですよ!すぐに警備の人を呼んできます!」

 「落ち着けってほら飴ちゃんあげるからね?」

 「中々話ちがわかる人のようですね」


 飴を受け取ったアリーシャは大人しくなりしばらく飴を黙って舐めていた。

 飴で買収される少女を見て将来が少し不安になる子だな。と思っていたカケルにアリーシャは問いかけた。


 「飴玉の人は何でここにいたんですか?」

 「飴玉の人ってお前・・・まぁいいけど。俺はお前のお母さんの依頼で来たんだよ」

 「依頼?」

 「まぁ、お前には関係ないよ」

 「それってパパのぢんちんばいばいの件ですか?」


 サーシャは知らせてないと言っていたことからカケルは驚きアリーシャを見た。


 「何驚いているんですか。いつもいつもこんな船に乗っていればわかりますよ。部屋でおとなちくしているとでも思ってるんですか?」

 「あはは、確かにな子供が大人しくしてるわけないよな。こんな大きな船を探検しないなんてあるわけないもんな」

 「あなたはなちが分かりますね」

 「お前こそ」


 その後、カケルとアリーシャはサーシャが部屋に戻ってくるまで様々な話をして意気投合した。

 しばらく経ってサーシャが部屋に戻ってきた。


 「ママぁー!」

 「アリーシャ起きてたのね。カケルくんもごめんなさいね」

 「気にすんなよ」

 「そろそろ始まるようですので、カケルさんも戻っていてください」

 「分かった。オークションの方はまぁ、何とかしてみるよ・・・」


 ――

 オークション会場


 豪華客船の中でも一番大きく広い場所にオークション会場は存在していた。

 そして俺もウエイターとしてオークション会場にいるいかにも金持ってそうな奴らにワインを配っていた。そしてアンドレアスの姿を確認する為に座っている二階の席まで足を運んだ。


 「遅かったではないかサーシャ」

 「申し訳ございません」

 「まぁよい。そこに座れ」

 「ワインをお持ちしました」

 (こいつがアンドレアスか・・・)


 少し遅れて到着してもらったサーシャさんにお酒を渡しアンドレアスの姿を確認した。

 既に席についてアンドレアスは意外にも筋骨隆々な体をした男であった。更にその隣にはスキンヘッドの黒人男性、アルダーと言われていた男も護衛足して立っていた。


 「それでさっきの話はどうだ?」

 「それは、や、やはり私は・・・」

 「ふぅー、まったくお前という奴は娘の一人くらい直ぐにでも捨てられんのか?」

 「!?」

 「全くおっと、そろそろ始まるなこの話は後だ」


 娘を売る・・・もう少し詳しく聞きたかったがオークションが始まる音がなり今はそちらに集中する事にした。


 「レディースアーンドジェンドルメーン!!!今宵、最高のパーティーに参加できる幸せな皆様!まずは我らがアンドレアス様に盛大な拍手をお願いいたします!」


 そう司会者が言うとスポットライトが全てアンドレアスに当たり、アンドレアスは立ち上がり手を振ってそれに応えた。


「さぁ!挨拶も程々に今日も最高なパーティーにいたしましょう!!!」

「さぁでは早速今日の商品となるのはこちら!!!」


 会場中が熱狂する中、始まったオークションは九条の情報通り子供達がその商品として売られていた。

 子供達はひどく怯えた目をしながら、その場で震えていた。

 まだオークションすら始まってない中、俺はそれを見てかつて、とある少年、少女の事を思い出していた。あの日のあの子達と同じ目で怯える売られる子供を俺は少しでもほっとくことが出来ず気がついたらステージに向かって二階から飛び降りていた。

 

 「更に今回は驚くことなかれ、この子達全てが何とnoiseを所持しているのです!」

 「さて、それでは早速一人目からぁぁあ!!?」


 それはオークションが始まる瞬間だったステージにいきなり現れたカケルは司会者を殴り飛ばし、そのままマイクを奪った。


 「な、何者だ貴様!どこから入ってきた!!!」


 現れた男は中指を立てながら不適な笑みを浮かばせ会場中に聞こえるように答えた。


 「玄関からに決まってんだろバカか?おっとそうだったちゃんと挨拶してなかったわ。初めましてオークションをぶち壊しに来たウエイターのカケルで〜す」

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