第4話 少年の生きる意味
「ここ、は?・・・」
とある病室の一室で目を覚ました美希子は周囲を見渡して、先程まで自分がいた場所とは違う真っ白な空間にいることに気がついた。
自分がどうしてここにいるのか、あの後どうなったのか、何も分からないまま混乱していたところに病室の扉が開いて誰かが入ってきた。
「あなた、は?」
「ふぅー、私はネオ・アストラルシティに新設された警視庁に所属しているしがない刑事だよ」
タバコを咥え、黒髪を腰まで伸ばした女性が病室に入ってきた。
「伊藤美希子。今回の女性焼失事件の真犯人だな?」
「・・・はい、私が親友でもある彼女を殺しました」
美希子は観念して、今回自分がしでかした事を全て女刑事に話した。
女刑事はそれをただ黙って聞いた後、口を開いた。
「男絡みで親友を殺すか、とんでもないバカだな貴様は」
「ッ!」
何も言い返せなかった自分がした事はもう取り返しのつかない事だし、今にして思えば何てバカな事をしたと思った美希子はただただ黙っているしか出来なかった。
「全くそんなバカを救おうとしたあのバカもバカだな」
美希子はその言葉が誰に対して言ったのか一人の少年の顔を思い浮かべ顔を上げた。
「やっとこっちを向いたな。改めて初めまして九条玲香だ。お前を逮捕した女だよ」
「は、初めまして。あ、あのあの子は・・・」
「カケルのことか?あいつなら無事だよ。少し野暮用で今は別の場所に行っているがな。怪我のことなら心配するな、あいつはお前程度の力じゃあどうやっても倒すことは出来ないよ」
美希子は内心ほっとしていた。
自分を最後まで見捨てなかった少年、彼には感謝しているし、お礼も言いたいと思っている。しかしどの面を下げてもう一度彼に会えばいいのか分からなかった。
「そう難しく考えるな。あいつになら普段通りで十分だ」
内心を見透かしたかの様に答えた九条は席を立ち上がり美希子にある事を伝えた。
「今回の件だが、当然お前は裁判にかけられ罪を償うことになる。今はその両腕の怪我などからこうして入院生活だがな」
美希子が両腕に目をやると包帯でぐるぐる巻きにされていた。あの時、既に意識が無くなりかけていた美希子は少し驚いた。
「安心しろ。少し経てば元の生活が出来る。裁判の方もその後する予定だ」
「あ、あの!」
「何だ?」
「彼に伝えといてくれませんか?ありがとうって。罪を償ってやり直せるならやり直してみるって、、」
「ああ、勿論だ。必ず伝えておこう」
「後、刑事さんここ禁煙ですよ」
「ふっ、細かい事は気にするな」
そう言って九条は病室を後にした。
病室を出た九条は現在別の場所にいるカケルに電話をかけた。
『もしもし?あの人大丈夫だったか?』
「ああ、意識を取り戻した』
『それなら良かったぜ。ありがとうな九条!』
「九条さんだ。全くこの私をパシリ扱いするとはお前もいい度胸だな。それにしても今回も派手にやってくれたな?倉庫は跡形もないぞ」
『ハッハッハ。細かい事は気にすんなよ。あの人にはこれ以上、あんな事しないで欲しかったんだよ。人殺しなんていいもんじゃないしな』
カケルは拳を握りながら、かつて自分のエゴによって大勢の人達を犠牲にしてしまった事、大切な人を取り返す為に自らの手を汚したこと、そんな自分を怯えた目で見る少年、少女の姿を思い出していた。
『誰かが一歩を踏み出してやらないと苦しんでいる人達を助け出す事なんて出来ない。だから俺は何でも屋をやる事にしたんだ』
そんな自分の手を優しく握ってくれたとある少女。そんな少女のようになりたくてカケルは誰かの為に命をかける。
超常はびこるこの世界で苦しむ人達を助ける為に拳を振るう。あの時誓った想いをカケルは胸に留めながら九条にある問いかけをした。
『ところでさ、俺なんでこんな所でウエイターなんてさせられてんの?』
「ん?次の依頼のためだろ?」
『ふざけんなよ!?何で俺がこんな事せな行かんのだ!お前がやれよ!』
「それは無理だと説明しただろバカ者が」
『おんまえぇ!』
カケルが何かを言いかけた時、知らない誰かがカケルに声をかけてきてカケルとの通話は終わった。
「任せたぞカケル」
ーー
数日後とある豪華客船
「いてっ。あ、も、申し訳ございません」
「気にしないで」
「ウェイターまだか!」
「も、申し訳ございません。お待たせしました」
「すまないな」
「君君こっちにもグラスをくれたまえ」
「只今!」
俺が何故今豪華客船でウエイターをしているのかそれはあの事件があった直ぐ後に遡る。
あの日、九条が到着したと共に警察病院に美希子が連れてかれた後、俺はある依頼を受けていた。
家賃の方もそろそろだしね!
「簡単な仕事だよ潜入捜査だ」
「あんたら刑事でそうゆうのはやってくれない?何で俺に頼むんだよ」
九条の車に乗せられて黄昏荘に帰っている時に九条からお願いをされた。
この人は俺の知り合いの刑事でたまに仕事をくれたり、手助けをしてくれたりしている。
まぁその仕事は毎回毎回、命の危機に瀕するものばかりなんだけどな。
「仕方ないだろ。本来は私が潜入する予定だったのだが、上からの命令で中止となってな」
「はぁ?なんでだよ」
「主催者が主催者だからな。どうやら上の方からの圧力が原因らしくてな」
「主催者?誰なんだよ」
「アンドレアス・ディヴァインと呼ばれている」
「あ、全然知らないわ」
「知らないならいい後で情報を調べておけ。少し省いて説明するぞ」
九条が言うには四日後の19時からネオ・アストラルシティの港区に豪華客船が到着するらしい。財政界の大物や政府の要人など数多くの富豪が参加するらしく警護も厳重らしい。
それらの情報をとある協力者から入手したらしかったが上に操作自体握り潰されたと、
「おいめちゃくちゃ闇深いだろこれ!俺死なない?ねぇこれやばいやつじゃん!!!」
「そうかもな。だがお前は今回のこれは無視できないだろうよ」
「どうゆう意味だよ」
「人身売買だよ」
「!?」
人事売買、その言葉を聞いた瞬間にカケルのスマホを握る手は強くなった。
「なるほどな。そりゃ断れねーな」
「お前ならそうゆうと思ったよ」
「でもよ。警察介入できないのにどうするつもりなんだよ」
「安心しろ。そこは大丈夫だどうにかなる。ともかくお前はウェイターとして潜入してもらうからな」
「は?ウェイター?」
「そうだ。これから私はお前を潜入させるための手続きを行うからな」
こうゆう経緯で俺はウェイターとして豪華客船に潜入することになった。
「そう言えば九条の奴協力者がいるとか何とか言ってたな。・・・ん?」
俺はポケットに違和感を感じて手を入れてみるといつの間にか四角に折りたたまれている紙が入っているのに気がついた。
「んだこれ?」
紙には30分後、船の甲板に来て欲しいとだけ書いてあった。
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