第24話

「辛い思いを?」


だからあんな無表情になったのかな。

そう言えば無月さんってやたら波月さんを敵視してたっけ。


「パパ、無月さんって波月さんが嫌いなの?」


「ああ。お互いに嫌いあってる。パパも無月さんは嫌いだな。」


あっさり口にしたパパに驚いた。


「いいの?黒木家の顧問弁護士なんじゃないの。」


無月さんも黒木家の人だよね。


「元、顧問弁護士だよ。今は個人的に波月さんの専属弁護士。波月さんが立ち上げた会社の顧問弁護士は引き受けてるけどね。無月さんとは無関係。」


「そうなんだ。」


「昔、顧問弁護士の頃、無月さんは山程女性問題を起こしてね。四六時中呼び出されて対応に追われたもんだ。

だからきっぱり縁を切った。」


苦々しいパパの声は当時本当に大変だったことを伺わせた。


「無月さんは黒木家の長男で正妻の子供。波月さんは認知された愛人の子供なの。

でも今の黒木グループの経営を支えてるのは波月さん。彼あっての黒木財閥なのよ。

だから無月さんは波月さんが嫌いなの。努力しないくせに人一倍プライドだけは高い人だから。」


ママがざっくり説明してくれてようやく無月さんの態度に納得した。


「波月さんは苦労して今の地位を築いた。無月さんは最初から持ってた地位を蔑ろにして墜ちた。

そればかりか波月さんの足を引っ張る事までしたんだよ。」


苦い顔をしたパパを見てくすりと笑うママ。


「だからパパは無月さんが嫌いなの。

ママはそんなパパが大好きなんだけどね。」


2人は仲良しなんだと思ってなんだかうれしかった。

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