第9話
豪華で広い浴室とあまりにひどい状態の私の体に驚いてあっという間に時間は過ぎ、
きっちり2時間後。私は部屋の応接セットのソファーに腰掛けて上城さんが運んでくれた料理を目の前にしていた。
食事はフランス料理。ランチメニュー見たいでそんなにボリュームは無いけど、前菜、スープ、サラダ、パン、メインディッシュ、なんとケーキのデザートまであって私が食べるタイミングを見計らったように上城さんが料理を運んでくれる。部屋に隠しカメラでもあるのかと疑ってしまう。
ちらちらと気付かれないように私を観察してる様子も気に入らない。
でもなにかと世話になってるし表情にもだせない。
それが余計に私をイライラさせて食事に時間がかかってしまう。
食後のコーヒーを飲んでる時に部屋のドアが開き、彼が部屋に入って来た。
ノックもしない。
たぶん長身で美貌の彼が
「旦那様。」
彼に気付いた上城さんが頭を下げて部屋から出た。やっぱり彼が『旦那様』か。
「美味かったか。」
どさりと私の向かい側のソファーに座り質問する彼。たいして興味も無さそうに相変わらずの無表情。
この質問にどれ程の意味があるのか。
「美味しかったです。ご馳走さまでした。あと洋服もありがとうございます。」
それでもお礼は言わないとと、謝意を口にした。
そんな私をじっと見て彼は微かに眉をしかめた気がする。
お礼のしかたが気に入らなかったのだろうか。
確かに素っ気なさ過ぎる気もしたけど
「説明して下さるんですよね。
貴方は誰で私は何故ここに連れてこられたのか。」
切り口上の私の言葉に彼はああ。と一言頷いた。その一言で私の肩の力が少しだけ抜けて今更だけどきちんと挨拶位すべきだと思った。
「はじめまして。
お世話になりました。」
自己紹介をしてもう一度改めてお礼を言った。
「
ぼそりと告げられた彼の名前。
「黒木さん。」
オウム返ししてみて頭の中の記憶をひっくり返す。親戚縁者、学校関係者、友達の家族、両親の友達…
駄目だ。思い当たる人は居ない。どうやら初対面の知らない人で間違い無さそう。
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