第8話

「食事を取られて落ち着かれたら、主人が話をしたいと申しております。」


食事をするより先に話をするべきだろう。こうなった状況を私は何も知らないのだから。

抗議しようとした私の口が開くより前に上城と呼ばれた人は、


「右手のドアが洗面と風呂。隣がトイレです。着替えは備え付けのクローゼットの中のものをご自由にお使い下さい。

先に着替えられますか?でしたら食事は1時間後に用意してお持ち致しますが。」


彼の言葉に


「2時間後にして下さい。」


とにかくシャワーを浴びて着替えたかった。

返事を返した私に


「かしこまりました。ご挨拶が遅れました。私は当家を管理いたしております。上城かみじょうと申します。」


彼は頭を下げると静かに部屋を出た。

とたんに大きなため息がでる。

自分を蔑んだ人だと思うとどうも身構えてしまう。気にしなければいいだけなんだけど。


「とにかくシャワーを浴びてさっぱりしたい。」


私は無理矢理に怠い体をベッドから剥がしてゆっくりと立ち上がる。

ふと気になってカーテンを少し開けて外を眺めて驚いた。


「海!」


どうやら部屋は2階らしく、見下ろす先に広い芝生とキラキラと輝く海が見えた。波音が全く聞こえない当たり、防音対策は万全らしい。


「二時間しかないんだった!!」


しばらく呆けてた私は我に還りあわてて部屋に備え付けのクローゼットの中を覗き込んで固まった。


「何…これ。」


ブティックか?と思う程沢山の洋服がかかっていて、

引き出しの中には白から始まって黄色やピンクのパステルカラー。赤や青の原色から黒まで様々な色の下着が上下ペアで入っていて目を見開く。


「サイズがぴったり。私の為のもの?…まさかね。」


何度驚いたら慣れるのか。頭を振り深く考えるのを止めて薄い青の下着を選ぶと引き出しを閉めておとなしめのワンピースを手に取るとお風呂に向かった。

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