第3話

別に貞操観念がとりたてて強い訳じゃない。

経験した子だって周りに沢山居るし好きな人も居ないし。

バージンじゃなきゃ女としての価値が下がるとか、ましてや結婚出来ないなんて思ってる訳じゃない。

それでもハジメテは好きな人がいいと人並みに思ってた。

薬を飲まされて何の記憶もない初体験なんて惨め過ぎる。

残されたのは体に残る跡と大きな不安だけ。

私の体を好きにしたのは最後に部屋に入ってきた男だろうか。

霞む視界の中で捕えた姿は曖昧で。大嫌いな義理の兄に似ていた気がした。

私を抱いた人はちゃんと避妊してくれたのだろうか。

妊娠したらどうしたらいいんだろう。

義母を頼る事なんてしたくない。

頭の中はパニックで涙さえ出て来なかった。


そう言えばスマホ!

何処にあるの!!

確か鞄の中に入れたまま。頼れそうな友達の連絡先はスマホの中だ。番号は記憶してない。再び閉じた目を無理やりこじ開けてスマホを探す私は部屋の様子を確認して唖然とした。


「…なに、ここ」


広々とした部屋は高級絨毯が敷き詰められカーテンも上質で高価なものだ。

置いてある家具や調度品だって中学生の私にだって高級品だと一目でわかる。

まるでテレビで見た一流ホテルのスィートルームみたい。

なぜ私がこんな場違いな場所にひとりきりでいるんだろう。

無理やり重い体を仰向けて白い天井のモザイクをぼんやり見詰める。高級な部屋は天井も綺麗なんだ。

戸惑う私の耳にいきなり響いたのは


バァァァン!!


重厚なドアを開け放つ乱暴な音で…


玲羅れいらさま!」

「離しなさいっ!!女が居るんでしょっ!!」


2人の男女が縺れながら部屋に飛び込んできた。

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