第5話

『…先、サイテー!』

『きゃはははっ。ヤマ外したんだぁ?』

『…カラオケ行かねー?』

『明日の古典捨てるんだぁ?』


賑やかな声にうっすら目を開けて窓から外を確認すれば…


私立志仰学園わたくしりつしこうがくえん。」


目の高さに有った正門の高校名を読み取った。下校時間には早い。

試験中という感じか。

男子は白のカッターにノーネクタイに黒のパンツ。

女子も白のブラウスに紺のスカート。赤いリボン。

本当なら私も高校一年生。引け目を感じて視線を落とすと膝の上の紙袋が目に入った。


「胸を張っていいよね。」


私は私で頑張ったんだし。

顔をあげるとバスに乗り込んできた男子生徒と顔があった。

ドクン!心臓が跳ねる。

嫌な予感。

タイプはまったく違うのに彼と似た雰囲気がある。

私はそっと様子を伺う。

ちょっと軽薄な感じだけどイケメンだ。


「嘘っ!藤田ふじたさんっ。」

「きゃ!なんでっ?」

「化粧っ!変じゃないっ!?」


周りの女子高生が騒ぎだした。

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