第4話

視線を前に戻して深呼吸。

平日の昼間。半端な時間のバスの利用者は少ない。

運転席後ろのバスの路線図を見て運賃と経路を確認する。

一度海に向かって途中で北に向かうバスに乗り換える。

一時しのぎの捕まらないための小細工。


「夕方には目的地につけるかな。」


紙袋を撫でながら私は微笑んだ。

目的地は少し離れた国定公園。

日に5往復するバスの最終出発時間までに間に合えばいい。


『待ってて。必ず行くから。』


約束は果たせそう。

ほっと息を吐き窓から外を眺めた。

住宅街から松林へ。

潮の香りがする停留所で乗り替え。

波の音はするけど、

松林の向こうにある筈の海は見えない。海に来たのも何年ぶりかな。出来れば波に触れてみたいんだけど。

乗り継ぎ10分じゃ無理だよね。

私は近くのコンビニでサンドイッチとミルクティーを買い、バスを乗り継いだ。

ここから終点まで30分。

彼のテリトリーからは随分離れた。

と言うか、彼にとっては敵地に入る。

ここまで来れば目的を果たしたも同然。

ほっと肩の力を抜いてバスのシートにもたれ掛かかると浅い眠りに落ちた。

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