メガネの女 Side 片瀬晴海

第10話

side 片瀬晴海




昨夜、『龍王』の倉庫を訪ねてきたつるぎと遅くまで話し込んだ。

話は次期総長と幹部の事。

俺は一年間ダブって2年間総長を務めた。秋には人事を決めて実質引退だ。

ダブった理由はズバリ単位不足。


俺の通う志仰学園建築科は技術クラスらしく専門教科が多い。取得単位もだ。普通科なら十分単位は取れてたんだが将来建築家になりたい俺にはどうしようもない状態だった。

『龍王』総長を引き受けた時から予想出来た事だし後悔はねえ。後任の心配もあったしな。


そう思いながらも親友や好きだった女が大学生になり、取り残された時の情けねえ気持ちは覚悟してながらもキツかった。

そんでも踏ん張れたのは、同じ様に留年しながらも進みたい大学に進学した尊敬する先代を知ってるから。


「で、晴海は進路決めてんだよな。」

剣の声に我に返る。


「ああ。K大の建築。」

「そか、あっこなら大丈夫だな。」


『大丈夫』か。剣が言うなら安心かな。

推薦ももらえそうだし。

久しぶりの剣との会話は弾んでかなり遅くまで話し込んだ。剣を見送った後も龍王の面子と夏の暴走のルートの確認をして、気付いたら午前3時。

さすがに帰るのも面倒で倉庫の総長室に泊まったが…3時間で目が覚めちまって二度寝が出来ねえ。

何度か寝直しを試みるが上手くいかず結局起きた。


「仕方ない、桜子に頼まれてた合格祈願のお守りをもらいに行くか。」


目的地の尾羽紫利神社は溜まり場からバイクを走らせて30分強。

山間の村を護る神社だ。

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