第11話

途中コンビニに寄り適当に時間を潰して朝飯を買って神社に向かった。

朱塗りの大きな鳥居をくぐり、ひんやりした空気の中ゆっくり石段を登る。


『もしかして、交通安全祈願するの?』(暴走族の癖に!!)と口には出さなかったけど 思い切り顔に出してたっけなアイツ。

今でも不意に思いだし甘酸っぱい気持ちになる。


「大概、俺も未練がましい。」


呟きながら階段を登り切りベンチに座るとコンビニで買ったパンで朝飯を済ませた。


「さて、どうすっかな。」

社務所が開くまでまだ時間がある。

社務所の奥に住居があるんだけど流石に朝早く訪ねるのは躊躇ためらう。

何しろ『龍王』先代3代目幹部の実家だ。

井筒貴己いづつあつきは45才。父親から仕事を受け継ぎここの宮司になったばかりだ。

10才年下の美人の奥さんと5才の娘がいる。


「貴己さん、低血圧で朝は機嫌悪りぃしな。」


ため息を付いたタイミングで社務所の玄関が開いて、嫁さんの京子さんが巫女さん姿で竹箒を手に現れた。


「おはようございます。」

俺は愛想よく声をかけて京子さんに向かい歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る