第7話
「すっ、いまっ、せ、んっお待たせして、っ!」
早く下りなきゃとは思うものの 既に60段位下りてしまった片瀬さんに追い付くのは大変で、結局片瀬さんが石段を登って来てくれて石段半ばで合流した。
汗だくでゼイゼイと肩で息する私に
「大丈夫かよ。」
呆れたように声をかけられた。
「す、いません、お時間取らせてっ、あのっ、」
焦って荒い息のまま話そうとする私に
「落ち着け。俺、今日は夜まで予定ないし時間あるから。」
だからゆっくり喋れと笑われた。
たっぷり深呼吸を10回こなせばなんとか呼吸も落ち着いた。
「お待たせしました。」
やっと普通に喋れるようになった私に片瀬さんは
「まあな。」
なんとも微妙な返しをくれてニヤリと口角をあげた。
なんか意地悪な人に見えるのは気のせいだよね。
「さっきお世話になったお礼です。」
私が差し出した手のひらには尾羽紫利神社の印刷がある白い小さな紙袋。
怪訝そうに私を見る片瀬さん。受け取ってくれないと困る。
「お守りなんです。もちろん縁結びじゃなくて、キィホルダーになってる交通安全のお守りです。」
私の言葉に反応の薄い片瀬さんに焦る。
「片瀬さんがバイクに乗るみたいだったのでお守りはバイクの形のキィホルダーにしたんですけど駄目でしたか。」
今渡さないと次に会うことなんて無さそうだし。私と彼との接点なんてきっと皆無だ。
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