第6話

「ちなみに私は井筒京子いづつきょうこ。旦那共々片瀬君の高校の先輩です。」


巫女さんまで自己紹介してくれた。


「あ、滝沢萌花です。」


そっか高校の先輩だからこんなに仲良しなんだね。


「じゃ、京子さんこれ。」


片瀬さんが京子さんに800円渡してお守りをもらい私に手渡す。

受け取った私はあわてて彼に部長から預かったお金から800円を渡した。

確かにこれなら縁結びなんて気にせずお守りが渡せるしね。


「ありがとうございました。助かりました。」

「おう。気にすんな。じゃ京子さん、お世話様。」


彼は手を振ると石段に向かって歩き出した。

見ず知らずの人なのに凄く親切だったな。なんかお礼したかったかも。


「まったく、片瀬君てば自分も受験生の癖に人のお守りの心配なんてねえ。」

京子さんが私の顔をみて思わせ振りに笑った。


「あのっ、これください。」

それはもはや衝動的なもので


「あら、それでいいの?」

笑う京子さんに


「これがいいんです。」

お守りをいただくとあわてて片瀬さんを追いかけた。

石段までいくと彼はかなり下まで下りていて、焦った私は大きな声で彼を呼んだ。


『片瀬さ~ん、待って!』

驚いて振り返る片瀬さん。そりゃそうだ。なんたって私の大声は森の樹に反響して木霊が反って来たんだもん。

『待って』『待って』『待って』


恥ずかしい。

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