第10話

高校が始発になるこのバス停。

発車時刻の10分前にはバスが着いてる。

乗り込む生徒の顔ぶれもほぼ同じ。時々居残りになったらしい生徒が交じる位。

だから座る席もほぼ同じ。

中央よりやや後部より。

私達の前には二つ前のバス停で降りる立彦と芯太。

席に着くと頼可は私の肩に頭をのせてうたた寝。それもいつもの事。


「完璧カレカノだよな。」


「俺達の真由加がっ!」


前の席からからかう2人もいつもの事だ。

スマホを触る人が多いから今さら他人の発言なんか気にしないし。ひとしきりからかうと立彦達もスマホを触り出す。まるで何かの宗教みたいで怖いとそう言う頼可は目を閉じる。

もとからスマホを触る事が少ない頼可。なんと無くだけど、怪我する前はスポーツ少年だったんだろうと思った。やがてバスは定刻に発車して、


「じゃあな。」


「また明日。」


いつも通り立彦達が先に降りて

私と頼可を含めた数人が2つ後の停留所で降りる。

日が短くなって辺りは暗い。空には星が光り吐く息が白くなるのも直ぐだろう。今年は頼可に編んでもらったマフラーを巻こう。

休み時間教室で編む頼可を見て私のクラスでは何気に編み物がブームだ。女子限定だけど。

初めは頼可をからかってた男子達も既製品みたいなマフラーを見て何も言わなくなった。実は私もこっそり頼可にマフラーを編んでたりする。

ただ頼可ほど器用じゃ無いから手作り感満載。つまり編み目が不揃い。気に入らなくて編んではほどくの繰り返し。頼可の前じゃ編めないし…でも冬休みには間に合わせたい。

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