第9話

頼可と2人、バス停に向かうと既に芯太や立彦が待っていた。

6時10分に高校前を出るバスが部活の生徒や居残りの生徒を運ぶ最後の足になる。

正確に言えば更に20分後に最終バスがあるけど、そっちは逆方向に行っちゃうから使えない。

バスに乗り遅れたら家の人に迎えに来てもらうか残ってる先生にお願いしないと家に帰れなくなる。

置き自転車してる子も居るけど長い間放置すると悪戯されたりする。


「間に合ったな。」


「余裕。」


そんな会話を立彦と交わす頼可。

仲良くなってくれてちょっと嬉しい。

もともと頼可は寡黙であまり喋らないから。


『あんたよくあんな愛想の無い男と一緒に居れるわね。』


これはクラスメートの柚希ゆずきの台詞。

中山柚希なかやまゆずきは芯太や立彦と同じく私の幼馴染み。背が高くてクールビューティー。口が悪いのが最大の欠点。

私達とは逆の帰宅部。

授業が終わるとさっさと4時バスで帰っちゃう。

柚希の言うのもわかるけど、

だって仕方ない。頼可は怪我の治療でここに居るんだし温泉治療は効果的らしい。足が治れば家族の待つ家に帰る頼可。別れが見えてる皆とあまり関わらないようにしてるのだと思う。


実際怪我の治療でここに来て少しだけ高校に在学して治療を受けて、回復してから転校した人も居たらしいし。

頼可は愛想は無いけど挨拶位はちゃんとする。

私以外の女子に素っ気ないのだって恋愛しても別れが見えてるからだと思うんだ。

…なんて。

(頼可との別れが怖くて)事情を詳しく聞けない私の勝手な思い込みもあるかもしれないけど。

頼可は優しいからわざと素っ気ない態度なんだと私は思ってる。

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