第7話

先輩の気が変わらない内に…って言うわけでもないけど。

頼可の手を引いて図書室を出た。


「ねえ、頼可。」


「うん?」 


階段の前で頼可に振り向く。

あ!手をつないだままだ。慌てて手を離して頼可に聞いてみる。


「頼可って強いの?」


「…は?」


言われた言葉に頼可が首をかしげた。


「だってさっき先輩の腕を捻り上げてたよね。」


私に言われて頼可は苦笑い。


「あれは偶然。肩を揺さぶられて手を退けようとしたらああなった。」


「偶然…」


ちょっと信じられないけど。でも頼可はまだ左足が完全じゃ無いわけだし。

私は無意識に頼可の左足を見た。


「編み物と菓子作りなら自信あるよ。」


そんな私に頼可は真面目に答える。


「うん。それは知ってる。」


なにしろ既製品みたいなマフラーを編んでくれたし。差し入れしてくれるアーモンドクッキーはパパのお気に入り。帰りの遅いパパは頼可が家で私と夕食を食べるのを許してる。

それは多分、編み物とお菓子作りが得意な頼可を女の子だと思ってるから。

独り暮らしの頼可は偶然にも私と同じマンションの住人だった。

毎日午前様ギリギリの終電で帰るパパは仕事大好きのやり手営業マン。

独り家で待つ私の事はちゃんと心配してくれてて、だから頼可が部屋に来てくれる事は歓迎してるのだ。

頼可も頼可で独り部屋に居るのはつまんないらしいし。

お菓子作りが天才的なのにご飯作りは苦手な頼可はごく自然に毎晩 家に夕飯を食べに来る様になった。

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