第5話

「…伊藤いとう先輩。」


図書室には誰もいなかった筈なのに。何処から湧いてでたの!

入り口は頼可に塞がれてるし。


「書庫の整理をしてたんだよ。」


視線を泳がせる私を見て伊藤先輩が笑って奥の扉を指差した。

書庫…入った事はあるけどあそこの整理なんて司書さんの仕事じゃないの。


「それより僕とのこと考え直してくれた。」


まだその話続いてたの?断ったのに。

先輩がずいっと距離をつめて私はそのぶん後ずさる。

私の身長は158センチあるけど180センチはある先輩に見下ろされると威圧感が半端無い。苦手だ。なんか薄ら笑いが怖いし。


「真由加が嫌がってる。」


私と先輩との間に頼可が割り込んで盾になってくれた。先輩が現れたのに気が付いてくれたんだ。私は安心してほっと息をついた。


「また君?屋島頼可君。」


先輩は頼可をみてせせら笑う。頼可を見下してる。嫌な感じ。


「森さんには君は釣り合わないよ。」


「先輩なら釣り合うんですか。」


「当然。でなきゃ声をかけない。美男美女でお似合いだろ。」


「どこが。」


頼可の呟きに思わず頷いた。先輩はともかく私は普通だ。勝手に釣り合わさないで欲しい。


「とにかく君は邪魔。しばらく遠慮して。」


頼可を退けようと先輩の手が頼可の肩にかかる。不味い。頼可は10センチ位先輩より背が低いし。力ずくでおいだされちゃう。頼可が居なくなって先輩と2人きりとか無理だし。

私は図書室から逃げ出すことに決めた。先輩に失礼だろうが構ってられない。


「…っ、離せ!」


頼可が声を…え?

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