第9話
「あのねぇ!貴方達に首筋殴られて拐われたの。お見立て通り私はモデルの端くれな訳。やっと最近になってお金が稼げる様になったのよ。
傷口を確かめるのに硝子窓って…謝意の欠片もないわね!傷が残ったら損害賠償させてやるっ!!」
私が吠えるとライはぽかんと口を開けて爆笑しだした。
「お前、ヤクザに損害賠償って。それより殺されないかとか心配するだろ普通!」
「ふん!私に頼み事があって拉致ったんじゃない。それがすむまではとりあえず私は安全よ。」
せっかくお風呂付きのアパートに引っ越したんだし。私のモデル生活はこれからなんだから。
「モデルねぇ。」
「な、なによっ!」
「いや、それって体重管理とか大変なんだろ。」
「まあ。それなりに?」
「髪を切ったりするのも許可がいるのか?」
ライは然り気無く私に近付くと私の自慢のロングストレートの髪に手を伸ばし
「流石、サラサラだな。」
感心した口調で言う。
なにしろコンプレックスになるほど男顔だし髪ぐらい伸ばして女の子のアピールしないと…なんてね。長い髪は私の密かな自慢。誉められて嬉しくなる。
「いや、余程特殊な髪型でない限り…
許可は要らない」と言おうとしたら、
ヂャキン!
耳もとで凄い音がした。
シャクシャクシャク…
パラパラパラパラ…
「‥‥‥」
ライはデカイ裁ち鋏で私の長い髪を遠慮容赦なく切りまくってる。
「ち、ちょっと!なにすんのよ!馬鹿なんじゃないのっ!!」
我にかえって叫んだときは『時すでに遅し!』ってヤツで。
長かった綺麗な髪はざんばらに切られて私の足元で黒い糸束のような塊になっていた。唖然…。
「若頭の替え玉を引き受けたんだろ。
心配すんな。普通にショートカットになるだけだし直ぐに伸びる。」
私の髪を見てニカッと笑うライの横っ面を私は思い切りグーで殴った!
バキッ!!
「いったぁ!!」
硬い歯に当たったらしく握りこぶしが赤くなった。痛くて涙が出る。
ポロポロポロポロ…
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