第5話

「貴女のお兄様久世一心くぜいっしん様は若頭として日々精進されて組員からも慕われる良い若頭でした。」


「はあ。」


慕われる…ねぇ?さっき『なよっちい』とか言ってたじゃん。

なんか白々しくてまともに聞く気にもならない。しかも「でした」なんて思い切り過去形。鈴城さんの中ではもう兄は過去の人なんだ。


「今の早瀬組には一心様が必要なんです。」


「そうですか。では良い医者にかかるなり回復祈願なさるなりされたらどうですか。」


腹違いの妹を拐って事情説明してる場合じゃないでしょ!


「いえ。今、一心様が怪我をされたことが外に漏れては困るのです!」


「…はい?」


困るのですっていっても既に怪我して意識不明なんでしょ。命が危ないなら次の後継者を決めないと。


「今、早瀬の組の中では秘かに一心様を追い落として次の後継を狙ってる汚い奴等がいるんです!」


ほお!それ私知ってる!あんたの事じゃん温大さん。


「‥‥‥」


「‥‥‥」


私とジャガイモ二人はお互いの腹を探るように見つめ合った。

(面倒臭いしジャガイモで良いや!)


「…で?私に何をさせるために拐ったの。」


ジャガイモ顔と見つめあってもつまんないし、らちがあかないから思い切って聞いてみた。気がついた時の二人の会話からだいたい想像はついてるけどさ。無理難題を吹っ掛けるに違いないし。挑むようにそう聞くと


「流石は久世の血筋。物わかりが早い。」


ジャガイモ二人はなんだか嬉しそうに言って


「実は…」


とんでもない話を始めた。

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