第4話

久世くぜ?」


聞き覚えのない名前に首をかしげる。


「痛っ!」


げ!青アザとかできてるんじゃないか。思わず首筋に手を当てると、


「乱暴な真似をしてお詫びします。

緊急事態だったもので。」


私はゆっくりと身を起こした。

確認すると結構座り心地の良いソファーに寝かされていた。


久世一葉くぜいちよう。貴女のお父様です。お母様から聞いてませんか。」


「いえ。早瀬と言う組の組長だと聞いていたので、てっきり早瀬と言う名字だとばかり…」


一度も会った記憶もないし母と私を捨てた男のことなんてぶっちゃけ興味ないしなにより生活に手一杯だったし。


「早瀬組は創始者の名前を引き継いでますが世襲ではありません。

むしろ世襲しようとするとことごとくく邪魔が入る感じで。」


「邪魔がですか。」


どういう意味?パチパチと瞬きする私に


「子供が生まれなかったり女の子だったり。婿を取っても早死にしたりで。」


「…へぇ?」


ジャガイモ顔のヤクザは丁寧に教えてくれたけど。怖っ!なんかに祟られてないか。でも、ちょっと待って。


「と、言うことは…」


「はい。貴女の母親違いのお兄様が事故で意識不明の重体になりました。」


「…!!」


ちょっと!マジでお祓いしてもらいなよ!早瀬組、きっと何かに取り付かれてるし。腹違いの兄貴を心配するよりそんなことを考えた。だって仕方ないじゃない。

一度も会ったことないし。

他の愛人が男の子を産んだからその女が本妻になり私とママは捨てられたんだと、そりゃあ耳にタコが出来る位聞かされてるし。父親に対して良い感情は持ってない。

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