第20話

声を我慢できずに泣き出した私に桐生仁は舌打ちを繰り返すけど、

もうなりふり構ってなんていられなかった。殺すんなら殺せばいい!

私はわんわん子供みたいに泣きじゃくる。


「ウルセェ!!黙れっ!」


キレたっぽい声を出した桐生仁はぎゅうっと私を抱き締めた。

な、なんで!?


「チッ!面倒臭い。ゆきとは大違いだ。」


吐き捨てる様に言われた。


「‥‥‥」


大泣きしてしまい涙は急に止まらない。それでも『雪とは大違い』と言う単語は聞き取れた。私と比較すると言うことはやっぱり女の人なんだろうか。


「仁様。まさか彼女を雪と同じように扱ったんですか。」


凪砂さんが焦ったように声を出した。


「当たり前だろ。コイツを俺に服従させる必要がある。雪の様にな。」


「‥‥‥」


どうやらこんな非道な扱いをされたのは私だけでは無いらしい。

雪さんという先客がいて彼女はどうやら桐生に屈服して飼い慣らされたみたいだ。

ゾクリ。背中を冷や汗が流れる。

服従したらその後で私は何をされるんだろ。雪さんって人はどうなったの?

少しずつ涙が止まりしゃくりあげるだけになった私に、


「早く俺に服従しろ。」


桐生仁は低い声で私に囁くと私の頭をひと撫でして膝から下ろして部屋を出た。

私はと言えば固まっていた。

笑った!

ふわりと優しく。桐生仁が離れ際私に笑いかけた。

飴とムチってやつだろうか。

酷い人だとわかってるのに微笑みかけられたら心拍数が上がる。

だって見た目は凄く綺麗なイケメンだし。いやいや、騙されるな私っ!

きっと雪さんもアレにほだされたんだ。

ブンブンと首をふり、背中を蹴られた事や、首を絞められたこと、無理やり食べ物を口に突っ込まれたことを思いだした。

アイツはアブノーマルな変態だ!

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