第17話

「なんの話だ。」


はああっ?


「私は三浦乃愛だって…

言ってるじゃん!

と言おうとしたら滅茶苦茶怖い顔で睨まれた。

ひいいっ!

思わず口をつぐんだ。

まだ死にたくないよっ!


「お前は成瀬静香だ。」


それはもう決定事項らしい。


「‥‥‥」


「覚えろ!平成☆年2月1日生まれ。

血液型はO型。」


あ!干支と血液型は同じだ。

じゃなくて!成瀬静香って早生まれで1学年上なんだ。

それにしても…


「覚えろ?」


顔色を伺う様に桐生を見ると、


「お前には成瀬静香になってもらう。」


無茶苦茶なことを言われた!いくら似てるからって、私がヤクザのお嬢になんか化けられるモンか!!


「無理。」


言った途端、


「う゛えっ!!」


首根っこを捕まれて吊り上げられた!

首が絞まるっ!


「従え!!」


一言言われてベッドに投げ出された。

ごほ、ごほ、ごほっ!!

咳き込む私を見て桐生仁は眉をしかめた。


「逆らうからだ。馬鹿が!」


酷いっ!悪魔だ。ぽろりと零れた涙を見て桐生仁が私に近付く。

怖いっ!思わず両手で顔をガードした。


「チッ!」


桐生仁は忌々しそうに舌打ちをして楽々と私の腕を顔から離した。

殴られるっ!?

ぎゅうっ!と目を瞑る私の頬に彼の指がかかる。


「ひいっ!!」


きっと首を絞める気だ!!


「お前、何で怯える。何を泣いてる。」


戸惑うような声で言われた言葉は意味不明。いや、意味はわかるけど、逆に何故わからない?

こいつは人の痛みがわからない奴なのか!そんなの、あんたが怖いからに決まってるじゃん。

もちろん言える訳などなかった。

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