第8話
はぁ~っ。
結局あの焦げ茶眼鏡の男はたいした情報をくれていない。
「静香さんのフルネームは成瀬静香。多分ヤクザのお嬢さん…?」
だって車の中の人達は『お嬢様』ではなく『お嬢』って呼んでたし、
『若姐さん』とか『若頭』とか聞いた気がする。
極め付きがこの足枷。
「別にヤクザの娘だから足枷つけられる訳じゃないだろうけど。」
困ったな。とんでもない人と入れ代わっちゃった。
更に複雑なのは多分焦げ茶眼鏡は成瀬静香の敵っぽいって事で。
私が本当の事を話しても信じてもらえるかどうか。
「…お腹空いた。」
絶対あれから一日は経ってる!だって空腹感が半端ないし。
部屋のどこにも食べ物は見当たらない。
「逃げられないにしても逃げ道を探す努力はしなきゃね。」
足枷をつけられたまま放置されて餓死とか笑えない。
じゃらり。
ベッドから足を下ろし裸足でフローリングの上を歩いてみる。
「なんか、ふわふわしてる。」
まだ本調子じゃないみたい。
取り敢えず窓に向かいレースのカーテンを開けて見た。
私は鎖につながれてるけど外を歩く人に助けを求めることは出来る。
「まぶしっ!!」
多分時間はお昼位かな。
「‥‥絶景?」
外の景色はこの部屋が高層にあることを示していた。
「…高っ!」
車も人も豆粒くらい。
助けを求めるなんて無理!
「風景に見覚えはないけど、あれが多分駅であっちに有るのはデパート。
で、遠くのあれが学校。」
そこそこ大きな街に私はいるのだと分かった。
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