第7話
「…気付いてたんですか。静香様ご気分は?」
様付けされてる?
使用人?
いやいや、最初の一言は、
『気付いてたんですか。』敬語じゃない!それにジーンズに黒いシャツとかラフ過ぎる格好だし。
私は返事を返そうとして口をつぐんだ。相手のことがわからない内は迂闊に喋れない。
年は私より幾つか年上に見える彼は
大学生位だろうか。
長い綺麗な茶髪は後ろで束ねてある。
焦げ茶色のフレームの眼鏡。奥から覗く目は切れ長の二重。知的なイケメンぽい。
背は、比較する対象がないから何とも言えないけど華奢な体型に見える。
「どうされました?まさか言葉を忘れましたか。」
かけられたのはからかいを含んだ意地悪な言葉。
眼鏡の奥の目は笑っていない。
どうやら敵キャラさんだ。
信用できない。
だって私の足首に足枷が見えてるのに平然としてるし。
女の子に足枷する趣味があるとか…アブノーマルな変態だ。
そこまで考えたら自然と顔が歪んだらしい。
「警戒してるんですか。それとも事故で頭を打ったとか。」
男が首をかしげた。
私だって首をかしげたいよ。
ペラペラ喋るワリに欲しい情報は手に入らない。
ここはどこ。あなたは誰!
私の…いや、静香さんの敵は私にも敵になるのか?
「‥‥‥」
どうやら黙っていても情報は手に入らないらしい。
私は思いきって口を開いた。
「あの、どちら様でしょう?と、言うかここはどこで…」
「チッ!」
私の声は、苛立たしげな舌打ちで遮られた。口をつぐんだ私に背を向けて男は部屋を出る。
「ちょっと待って!」
私の声は閉まったドアに弾かれる。
「訳わかんないじゃん!」
呟けば、ぐうっとお腹がなった。
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