第5話

『う、おあっ!』


『掴まれっ!』


『お嬢っ!!』


いきなり飛び交う罵声。

ギュルギュルギュル…

タイヤが軋む音、背中にかかる重力。


誰がが守るように私に覆い被さった。


ドン!


ドン!


ガシャッ!!


数回の衝撃の後、車は停止した。

まるでジェットコースター!上下左右に揺すぶられ停止した時はあり得ない格好だった。

天井が下になってる?

交通事故を起こしたのだと直感した。


「…っ、てえ…。」


「お嬢…?無事っすか?」


「‥‥っ、」


「…だ、いじょ」


案じる声に大丈夫ですと、あちこち痛む体と高熱に朦朧としつつ返事をした。

いや、しようとした。


ドン!ガンガン!ガチャ!

変形したドアが外から乱暴に叩かれて


ガコッ!


ギギッ!


おかしな音を発てて引き開けられる。


グイッ。


不意に伸びた手に腕を掴まれ車外に乱暴に引き摺り出された。

緊急時とは言え乱暴な救出。


「へえ、たいした怪我もしてねえか。なんだ?気分悪いのか。」


当たり前じゃない。事故にあったんだよ!

朦朧とする意識のなか乱暴な救出者に口を開こうとして私は意識を失った。


遠くで救急車のサイレンが聞こえた気がした。

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