第31話

そして迎えた5月3日の祝日。

2才上の彼と買い物の約束をした日。

待ち合わせは郊外の大型ショッピングモール。

約2ヶ月ぶりの再会。


「由香。」

声を掛けられて振り向くとそこには相変わらず色白の従兄弟いとこがいた。


「久し振りかおる相変わらず色白いね。」


「ありがとう。」

私の声に嬉しそうに少し高めの声で応える。


木村薫きむらかおる

県立藤ヶ森高校三年。

彼が通う高校は県内トップの進学校で、Τ大やΚ大への進学率が高い。

彼は親戚内でも自慢の種で、それをよく知る私の両親も私を藤ヶ森に行かせたがっていた。実際行ける位に勉強出来たし。

でも私が受験したのは志仰学園で。

両親は未だにソレを根に持ってる。

私が志仰に入って今はその期待が弟に行ってるんだけど。

弟は基本マイペース。両親にぎゃんぎゃん言われてものほほんと受け流してくれてて、私はそれに救われてる。

…辞めよ。また落ち込むだけだし。

気持ちを切り替えて薫に声を掛けた。


「服を見るんでしょ。

ワンピース欲しいんだよね。」

私の声に薫はにこりと笑うと頷いた。

相変わらず睫毛長い。美人顔だわ。

身長は170位だから男の子だと少し低いかな。

まあ本人はこれ以上背や筋肉は要らないと言うんだけどね。

ピンクのパーカーに黒のインナー。黒のジーンズ。相変わらずスリムで綺麗系イケメンだ。


「行こっか。」

自然と腕を組み歩き出す。彼を男の子だと意識した事は無い。

幼稚園の頃から私達は『女友達』だから。

彼は高校を卒業したら進学せずに上京して働いて。お金を貯めて東南アジア某国に渡る。

そこで性転換手術を受け女性に成る気だ。昔は私しか相談相手がいなかったが今ではインターネットで色々検索して、同じ悩みを持つ友達も出来て悩みを共有してるらしい。

私は小さな頃から薫の気持ちを知ってるから女性に成りたいと思うのは当然の事だと思うけど彼の両親が知ったらそれはショックかも知れない。

性同一性障害らしいのだが両親には話せないらしい。

私と良く買い物したりしてるから多分付き合ってると思われてるし、まさかそんな事は考えても無いと思う。

私は薫の事知ってるから時々薫に似合う服とか靴とかアクセとか見るのに付き合ってるんだけなんだけど

最近は、『いつ両親にカミングアウトしたらいいか』と言う難しい相談を受けたりもしてる。


反対されるのはわかってても、何も告げず女の子になる事はしたくないと薫は言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る