第16話

背は仔犬顔の彼より低いが、180近くありそう。

アッシュブラウンの柔らかそうな髪を自然に後ろへ流してる。

目は切れ長で、ややつり上がっているがキツイ印象がないのは、かたちの良い唇が上向きなせいか。

銀ブチの眼鏡が知的な印象を与える。

体つきは細身だが、弱々しい印象はまったくない。

彼は私の後ろに腕を組んで立ち、胡散臭げに私を見ている。

イケメンだけどいけすかない男。

それが第一印象。


「意味解りません。だいたい桜の樹から落ちたのは、…」

ちらりと彼を見て困る。名前知らない。まさか『仔犬顔の熊みたいな人』とは言えずどう呼ぶべきか迷う。

イヤミな貴公子は確か才賀と呼ばれてたけど、

黙り込んだ私に仔犬顔の彼の声が届いた。


「あ…。やっぱ俺落ちたんだ。あれ夢かと思ってたんだけど。」

のんびりした声に呆れてしまう。


「打ち身とか大丈夫ですか。」

座り込んだまま聞けば首や肩をグリグリ回して


「大丈夫。受け身取ったし。」

にっこり笑った。

無邪気な笑顔も可愛い。

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