仔犬顔の熊は『黒豹』

第9話

恐る恐るゆっくりと黒い塊に近付く。

まず目に入るのは黒いスニーカーを履いた足。


「大っきい。」

男の子の靴なんてしげしげと見た事無いけど、父親の靴よりかなり大きい気がする。


「詰襟の学生服って事はこの学校の生徒で、着古してるって事は多分上級生だよね。」

県下の高校の男子生徒の制服は志仰学園以外ブレザーで新品でなければ上級生。

解りきった事をいちいち口に出すのは怖いから。

だって動かない。樹の上から落ちて微動だにしないって…


まさか死んでるの。

それともこの男の子上の教室から落ちてきたとか。

投身自殺?

ここまで考えてあわてて頭の方に近付く。意識確認しないとっ。

てか、息してるの。


男の子と言うにはかなり大きな体を回り込み頭に近付く。

彼の頭は横を向いてて体はうつ伏せ。

立ったままこわごわ様子を覗えば、微かに背中が上下していた。周りに血溜まりもないから出血してても少しだけの筈。だからって安心は出来ないけど、血まみれの死体とかじゃないなら何とか近づける。

顔が見える側に回り膝をついて彼の顔を覗き込んだ。

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