第53話

「お引き取りを。

匠さんは只今手が離せません。」


「失礼ね。私は彼の母方の従姉よ。

部屋にもあげない気?」


安生と言い争うのは相変わらずケバい…いや、ケバさに磨きがかかった。弓槻舞子。


「うるせえぞ。」


俺が安生に言うと


「匠さまっ!」


甲高く装う声にうんざりする。


「相変わらずケバいな。

キャバの女でもここまで下品じゃねえぞ。安生が家に上げねえのは当然だ。」


俺は舞子を見て吐き捨てた。


「え?匠さま?」


「家に上がりたいならせめて胸位隠せ。太い足も仕舞え。みっともねえ。

まあ、顔はどうしょうもねえが。」


「た、匠さま?」


舞子が戸惑うのは無理もない。

実際ウザイから今までろくに相手もしなかったんだし。それを良いように誤解されるのも限界だ。

放置したら春菜まで傷付けかねないしな。


「で、はしたなく喚いてまで伝えたい用件は?さぞや大事な話なんだろうな。」


俺は舞子をお付きの男共々睨み付けた。


「も、勿論ですわ。」


「なんだ。」


舞子はちらりと俺の後方に立つ組員達を見る。


「コイツらに聞かせられない話なら出直せ。ただし次はお前の親父と二人ちゃんと礼を尽くして訪ねて来いや。」


俺の言葉に舞子と男共は青くなる。

ここは松江組。弓槻の様な広域指定を受けてない小さな組とは格が違う。

今頃気付くか。バカ女。


「な、七瀬のお嬢と婚約したとっ。」


「ああした。それがなんだ?お前には何の関係も無い話だ。」


目を見張る舞子に


「用がそれなら二度と来るな。付きまとわれるのは迷惑だ。」


俺がそう言うと

へなへなと玄関に座り込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る