自覚
第52話
『緋色』の溜まり場から戻って30分。
俺は橘の私室でパソコンの前に座っていた。
ディスクを差し入れると組関係の極秘文書がわんさか出てくる。
政府関係。原発関係。まさかの隣国との密貿易まで。
まあ北陸だから昔から大陸との貿易とか下地はあるし今さら驚きゃしねえが…。
「頭が混乱してくるな。」
俺の声に橘が笑った。
「大雑把な概要を30分でここまでつかめりゃ上出来ですよ。」
久々に嫌味無しで誉められた。
「吸いますか?」
橘が差し出すマイルドセブンに首をふる。
「禁煙した。」
「は?」
「肺癌で死んだら俺の役に立てねえんだと。」
「はあ。」
俺の適当な説明に首をかしげた極悪面が眉をしかめた。
「‥‥‥‥!!」
「‥‥‥‥!?」
「‥‥‥!!」
なんだ。玄関が煩いな。
なんの騒ぎだよ。
「
橘が戸口に立つ組員を呼んだ。
「へい。」
「玄関の客は誰だ。」
「弓槻舞子さんで…。」
「「ああ゛?!」」
あのケバい女、ここまで来たのかよしつけえな!!
「ひいっ!い、いま安生さんが応対に出てますっ。」
「チッ。様子を見てきます。」
動こうとした橘に
「俺がいく。」
「「は?」」
親父は留守だし組員じゃあしらい切れねえ。
「俺じゃなきゃ、怒鳴れねえだろ。迷惑だから二度と面見せるなって言ってくる。」
「匠さん…」
どんな未知の生命体でも一応は女だし怒鳴るのは躇ってたが正直ウザすぎる。
「いい加減、切らねえとな。」
俺は笑うと玄関に歩きだした。
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